ID番号 | : | 04200 |
事件名 | : | 地位保全等仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 住友電気工業事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 職場内での無許可のビラ配布を理由とする懲戒解雇につき、企業秩序に影響を与えていないとして無効とされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項3号 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務命令拒否・違反 |
裁判年月日 | : | 1970年9月3日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 昭和45年 (ヨ) 2525 |
裁判結果 | : | 認容(確定) |
出典 | : | 時報633号92頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-業務命令拒否・違反〕 およそ使用者が労働者に対して行使する懲戒権は企業秩序維持のためこれを乱す行為に対してのみ行なわれるべきものである。したがって会社施設内においてビラの配布が行なわれたとしても、それを就業規則七五条二一号に該当する行為として評価するには、それが会社の企業秩序を乱し、またはその恐れのあるものでなければならないものというべきである。これを本件についてみると、申請人の配布したビラがレコードコンサートへの案内を内容とするものであることは当事者間に争いがなく、したがってその内容において会社の企業秩序に何ら影響を及ぼすものでないことは明らかである。被申請人は右ビラの一部が就業時間中に配布されたものであるとしこれを重視する旨の主張をしているようであるが、労働者は就業時間中使用者に対し労働を提供する義務を負うので、その間私的な用件をなし、またその際他の従業員に働きかけてその労働の提供を十分に行なわせないのであれば、それは単に債務の不履行となるだけでなく企業秩序を乱す行為として評価できるとしても、本件において申請人は前記内容のビラの小片を同僚に手渡しただけであるから、仮にそれが就業時間中に行なわれたものであるとしても、その会社の企業秩序に及ぼした影響は就業時間中における従業員の些細な私語よりも更に軽微なものであり、その程度からして就業規則七五条所定の懲戒処分の対象とはなり得ないものと認められる。したがって会社が申請人の右ビラの配布を以て同規則七五条二一号の懲戒事由に該当するものとしたことは同規則の適用を誤ったものというべきである。 |