ID番号 | : | 04212 |
事件名 | : | 仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 中国電力事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 下関営業所から柳井営業所への転勤命令拒否を理由とする懲戒解雇が有効とされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 民法1条3項 労働基準法89条1項9号 |
体系項目 | : | 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令権の濫用 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務命令拒否・違反 |
裁判年月日 | : | 1970年12月3日 |
裁判所名 | : | 山口地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和43年 (ヨ) 83 |
裁判結果 | : | 却下 |
出典 | : | 労働民例集21巻6号1561頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令権の濫用〕 右認定の(一)、(二)の事実関係からすれば、債権者が、労使協調の立場に立つて生産性向上に協力するとともに容共路線の排除を標ぼうしているA会と厳しく対立して会社の合理化政策等に徹底的に対抗し、更には事が公けになれば、その真偽の如何を問わず会社の信用を害する虞れが顕著に認められる前記B事件を、会社の調査結果に納得せずに告発し、これを広く世間に公表するような行動に出たことから、会社が債権者の右の如き行動に不快嫌悪の念を抱いていたであろうことは推認するに難くないところである。 (三) しかしながら、本件転勤命令については、前記一に判示するとおり会社が債権者を久賀出張所に転勤させる業務上の必要性の存在が一応合理的に認められるうえ、前掲Cの証言、債権者本人尋問の結果によれば、債権者は、昭和四三年四月末ないし五月初めに行なわれた組合下関支部の役員選挙において落選していることが認められ、また前記認定のとおり会社は債権者に対して二回にわたりその意向聴取を行い、支部組合との団交に応じて本件転勤の理由についての説明を行つたが、前掲Dの証言(第一回)によれば、支部組合は本件について労働協約上の苦情処理の手続をとつていないこと、後記認定のとおり会社は事実上着任期限を猶予し、猶予期間中にも下関営業所長において債権者に翻意するように説得していること等に徴すれば、前記認定の(一)、(二)の事情があつたことから直ちに本件転勤命令を不当労働行為と断ずることはいささか困難であるし、また権利の濫用ともいい難いから、結局本件転勤命令は有効なものと判断せざるをえない。 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-業務命令拒否・違反〕 四 しかして当事者間に争いがない事実並びに原本の存在と成立について争いがない乙第二号証、同乙第六号証、前掲矢田貝の証言(第一回)によれば、次のような事実が、一応認められる。即ち、会社の規則第九条が、職員は転勤辞令受領の日から一〇日以内に新任地に着任しなければならない旨規定しているところ、債権者は、昭和四三年五月九日本件転勤命令の発令を受けたが、一〇日以内の同月一八日までに久賀出張所に着任しなかつたこと、そこで会社は、債権者に対して同月一八日付の「着任の催告について」と題する書面で同月二三日までに久賀出張所に着任するように催告し、更に同月二〇日下関営業所長が、口頭で右催告期限までに着任するように説得したが、債権者は遂に右期限までに久賀出張所に着任せず、あくまでも本件転勤命令を拒否する態度を維持し同月一八日から約二週間にわたつて部外の者達とともに営業所内において抗議行動を行い、ことに同月二二日及び二三日には、所内において坐り込みをし、会社側の退去命令にも従わず営業所の業務の阻害にいたる行動に出たこと、 以上の事実が認められ、他にこの認定を覆えす疎明はない。 右認定の事実関係からすると、債権者の行為は、会社の有効な転勤命令に正当な理由なく従わなかつたものといわねばならないから、債権者の右所為は、規則第六四条第一項第二号所定の懲戒事由に該当し、従つて会社が企業秩序を維持する必要からなした本件懲戒解雇は有効なものと判断される。 第三 以上のとおり、本件懲戒解雇は有効であるから、その無効を前提とする債権者の本件仮処分申請は、その余の点を判断するまでもなく、失当であるから却下を免れない。 |