ID番号 | : | 04215 |
事件名 | : | 社員地位保全等仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 日本専売公社事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 懲戒処分撤回のための施設内における無許可のビラ配布を理由とする懲戒免職処分および停職処分が重きに失し違法とされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項9号 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 違法争議行為・組合活動 |
裁判年月日 | : | 1970年12月22日 |
裁判所名 | : | 徳島地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和45年 (ヨ) 56 |
裁判結果 | : | 一部認容 |
出典 | : | 時報620号88頁/タイムズ257号201頁/訟務月報17巻3号419頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-違法争議行為・組合活動〕 すすんでその処分程度の相当性について検討するに、(1)申請人X1については、同人は免職の処分を受けたものであるが、前記のような申請人らの三日にわたる局庁舎内と出入口における客観的行動のみをもつて処分対象とする見地に立つときは、申請人らの行為は、本来、共同してしたものであるから、他の者は知らず、申請人らについては原則として同程度の評価を受けるべき筋合であるところ、同人についてのみいわば極刑に等しい当該企業(または当該特別権力関係)からの排除をもつて問責することは、甚だしく重きに失し違法無効である。被申請人は同人の責任加重事由として同人の日頃の勤務状況が著しく悪かつた点を主張し、(証拠省略)を綜合すると、申請人X1の昭和四三年四月以降四四年三月までの勤務実績は他の同職場の者に比し著しく悪く、昭和四三年八月一〇日には始末書を提出したことまである情況で、一時は自ら退職をしてもよいような意向を洩らしたこともあつたことが疏明せられる。しかし、前記就業規則によれば、かかる所為は規則六九条の処分対象には該当せず、またその加重事由とすべき直接の規定もなく、かえつて戒告または減給を定めた同規則六八条六号または七号に該当するに過ぎないことが明らかであるから、(証拠省略)、右主張は失当である。(2)次に、申請人X2、同X3については、同人らは六ヵ月の停職処分を受けたものであるが、同人ら及び申請人X1、同X4が、これより先前記東京でのデモに参加し、X4を除く三名が公務執行妨害罪等により逮捕勾留されたこと及びこれがためX4を除く三名が本件一次処分を受けたことは当事者間に争いがないところ、被申請人公社が右両名の本件処分にさいし、右一次処分にかかわる所為ある点を一つの理由として加味していることは同人らの今回の処分辞令書(証拠省略)や被申請人の本訴における主張に照らし明らかである。しかし、一般に、同人らが国民として思想表現の自由を有し、企業外における政治活動の自由を有することはもちろん、企業外の私生活について何らの拘束を受けないことも多言を要しないところであり、さらに例え企業外において社会的非行ないしは犯罪行為がなされたとしても、そのことだけで直ちに懲戒処分に付することは、それが専ら当該企業内の秩序維持当該企業の信用維持等にのみ由来する権限で、国家の刑罰権とは異り、これを超えることができない点に思いを致すと、許されないことである。いま、同人らの所為が如何なる評価を受けるかは別として-本件は一次処分の当否を判断する訴訟ではない-、本件に顕出された疏明によつてみても、果して同人らの所為が本件処分の一つの理由ないしは処分程度の加重事由となるとはにわかに速断し難い((証拠省略)によつても、(1)必らずしも同人らの当日の行動は詳らかでない点もある。(2)また、当時新聞で同人らの行為が報ぜられたことも、直ちに企業内秩序信用と関係づけることも、同人らが単純な現場労働者であることに照らし、困難である(この点はX1についても同様)。(3)現に昭和三九年の佐世保での原潜寄港阻止デモ(X4)、昭和四三年の徳島でのA追悼集会デモ(X4他三名)で逮捕勾留され、新聞報道された場合は不問に付された。以上のことが窺われる)。してみると、前記X2、X3の処分程度は右事情を考慮した分だけ加重であるといわねばならず、この点において重きに失し違法無効である。(4)また、申請人X4、同X5については、同人らも停職六ヵ月に処せられたものであるが、同人らの本件行動が前記両名のそれより非難性が大であるとの特段の事情も認め難いので本来、前記両名と同程度の処分に付されるべきが公平にして正当であるから(X4の場合は、三月七日の庁舎内でのもみあいのさい判示(6)のような他の者に比し過激な所為に出たことは認められるが、他方、同人は二月二八日の行為に参加しておらないから、前記のような個々の客観的行為問責の立場からすると、この点も彼此勘案すべきものである)、結局、同人らの処分も重きに違法無効であるといわねばならない。 |