ID番号 | : | 04230 |
事件名 | : | 仮処分控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 国際自動車事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 「従業員の制裁は賞罰委員会にはかって行う」旨の就業規則がある場合において、右手続を経ないで行われた解雇の効力が争われた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項3号 労働組合法16条 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 解雇手続 / 同意・協議条項 |
裁判年月日 | : | 1969年2月26日 |
裁判所名 | : | 東京高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和41年 (ネ) 2467 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労働民例集20巻1号191頁/東高民時報20巻2号41頁/タイムズ237号301頁 |
審級関係 | : | 一審/04392/東京地/昭41.10.20/昭和39年(ヨ)2133号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇-解雇手続-同意・協議条項〕 当裁判所も原判決と同様に本件諭旨解雇が懲戒委員会の諮問手続を経ていないからといつてそのために無効となるものではないと解するものである。懲戒手続において労働組合の関与を認めるのは会社の恣意、独断を防ぎ、組合員の正当な利益を擁護するためのものではあるが、組合の手続関与の程度、態様は各場合により強弱多様の形態があり、組合の同意又はこれとの協議決定を必要とするとのように強く右の趣旨を貫かんとするものから、単に組合の意見を聴くにとどめるという消極的なものも見受けられる。従つてそれらの手続が処分の有効要件をなすかどうかの評価においては、これをすべて一様に決すべきではなく、その手続の重要度に応じて検討すべきである。本件においては、前示就業規則の第六八条に「従業員の表彰又は制裁は賞罰委員会に諮つて会社が之を行う。賞罰委員会の構成、運営は別に定める賞罰委員会規則による。」と定め、また懲戒委員会規則第一条には前記(1)記載のように規定し、さらに同第二条において「懲戒委員会は会社組合双方より選出する各五名以内の委員を以つて構成し、委員長は会社側委員がこれに当る。」とされているのであるから、被控訴人において懲戒処分を行うには、労使双方により構成される懲戒委員会への諮問、すなわちその意見を聴取するということにとどめていることは明らかである。もとより就業規則は会社の一方的な自立規範ではあるが、ひとたびそれが定立されたときは労使双方を拘束することは労働協約に基づく場合と何んら変りはない。しかしその規定する手続が単なる諮問である以上、これに基づく懲戒委員会の答申そのものには被控訴人は拘束されるものではなく自己の判断に基づき処分することができるのであるから、その点において、処分される組合員にとりその利益擁護の手続的保障は他の場合と比較し軽度のものといわざるをえない。しかも右懲戒委員会規則の第三条には、「懲戒委員会は一般に公開しない。但し委員が必要と認めた場合は本人或は関係者を出席させ意見を聴取することが出来る。」と規定されていて、懲戒委員会に付議されても、必ずしも本人等の意見弁解を聴くことが保障されているわけではないから、この面からも本人の利益保護上さほど重視すべきものということもできない。そして懲戒処分事由については前記就業規則においてそれぞれの懲戒処分の種類に応じて詳細にその基準が示されており、また他方原告証人A、同Bならびに原審および当審証人Cの各証言によれば、組合側においては、従来から就業規則による懲戒委員会の開催に関心が薄く、懲戒該当事件が発生したときも被控訴人からの申入れに対しこれを開かなくてもよいとして団体交渉等の形で話し合つてきたことおよび本件解雇に当つても従前の事例と同様に被控訴人から予じめ組合にこれを通告し討議していることが疎明され、当審における控訴人本人の供述によるとこれを動かすに足りない。従つて、以上の諸点を勘案すると、本件において被控訴人が自ら定めた就業規則に違反して懲戒委員会への諮問手続を経なかつたことは非難に値することではあるが、しかしこれがため直ちに本件諭旨解雇が無効となるものと解すべきではないといわなければならない。 |