ID番号 | : | 04232 |
事件名 | : | 不利益処分取消請求併合事件 |
いわゆる事件名 | : | 桜江町・桜江町教育委員会事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 英語および国語教育にたずさわってきた教育公務員に対してなされた養護教育に関する研修命令の効力が争われた事例。 |
参照法条 | : | 地方教育行政の組織及び運営に関する法律43条1項 地方教育行政の組織及び運営に関する法律45条1項 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 教員の職務範囲 |
裁判年月日 | : | 1969年3月5日 |
裁判所名 | : | 松江地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和42年 (行ウ) 2 昭和43年 (行ウ) 4 |
裁判結果 | : | 一部認容,一部棄却 |
出典 | : | 行裁例集20巻2・3合併号205頁/時報574号74頁/教職員人事判例6号325頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 佐藤司・季刊教育法2号114頁/西井龍生・判例評論134号30頁/尾山宏・教育判例百選216頁 |
判決理由 | : | 〔労働契約-労働契約上の権利義務-教員の職務範囲〕 教育公務員の研修は、その職務の特殊性、並びに一般に研修が本人の意思に反して行なわれる場合は十分な効果を期待できないこと、教育公務員特例法一九条、二〇条が教育公務員の研修につき自主性を基調とし、これを奨励するため任命権者に研修計画の樹立とその実施を命じていること等に鑑み、事前に当該教職員の意向を確かめ、その意思を尊重して実施することが望ましい。ところで、本件研修命令は前記のとおり事前に原告の意向を確かめることなくその意思に反して発せられたものではあるが、県費負担教職員に対しその職責を遂行させるため必要な場合は、被告委員会は地方教育行政組織法四五条一項、四三条一項に基づき右職員に対し内地留学を命ずることができ、いかなる者にいかなる内容の内地留学を命ずるかは被告委員会の自由裁量事項であると解するのが相当であるから、本件研修命令が原告の意思に反して発せられたという一事から直ちにこれが教員の身分の尊重を定めた教育基本法六条二項に違反し、原告の研修の自由及び教育権を侵害するものということはできない。しかしながら本件研修命令は前記のとおり原告の具体的な権利義務に影響を及ぼす職務命令であつて行政処分としての性格を有するところ、自由裁量権に基づく行政処分が社会観念上明らかに合理性を欠いている場合、例えば、行政目的に妥当する処分理由を欠いているような場合は裁量権の範囲を逸脱したものとして違法性を帯びるものと考える。これを本件について言えば右の行政目的は特殊教育教諭の効率的な養成という点にあるものと考えられるところ、前記のとおり教育公務員の研修はそれが本人の意思に反して行なわれた場合は十分な効果が期待できないから、本件研修命令が原告の意思に反しても発せられなければならなかつた点につき特に合理的な理由がない限り本件研修命令は行政目的に妥当する処分理由を欠くものと考える。 (中略) 原告は既に英語及び国語の二教科につき中学校教諭二級普通免許状を有し、約五年間組合専従として職場を離れたものの、約一一年間普通中学校で英語及び国語教育に携つて来たものであり、かつて養護教育に関与したことなく、養護学校教諭の免許状の取得や養護教育に従事することを希望したことがなかつたのであるから、現職教員に養護教育の研修をさせることが県教委の教育施策に合致するとしても、島根県下に勤務している多数の県費負担教職員の中から特に原告を選んでその研修をさせる合理的理由にはならないものといわなければならない。又、永年勤続者として原告をA中学校から他市町村内の学校に転任させる必要があるのにその受入先がないとしても、そのことが直ちに本件研修命令の合理性を裏付けるものとはならない。しかも前記認定事実を総合すると第一次命令の真の理由は、原告が校長及び教育長等上司にとつて極めてけむたい存在であり、しかも異動の対象となつている原告を、受入先がないため転出させられないので、窮余の一策として特殊教育振興の名を借りて養護教育の研修を命じ、原告をA中学校から一時離れさせたものと考えるのが相当であるから、第一次命令には行政目的に妥当する処分理由が存在せず、社会観念上明らかに合理性を欠いているものといわなければならない。 |