全 情 報

ID番号 04254
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 東亜石油事件
争点
事案概要  製油所の製造部試験室の係員としてガスクロマトグラフによる組成分析に従事していた従業員に対するセールスエンジニアへの配転拒否等を理由とする懲戒解雇につきその効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法2章
労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務命令拒否・違反
配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令権の限界
裁判年月日 1969年6月28日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和40年 (ヨ) 2193 
裁判結果 認容
出典 労働民例集20巻3号614頁
審級関係 控訴審/00292/東京高/昭51. 7.19/昭和44年(ネ)1592号
評釈論文 門田信男・季刊労働法75号164頁
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-業務命令拒否・違反〕
〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令権の限界〕
 一般に、職務内容の変更は労働契約の内容の変更であるから、当該労働契約によつて予め予定された範囲を超える程度の、著しい職務内容の変更は、会社の一方的命令によつてはなしえないものというべきである。そこで、本件労働契約についてみると、前認定(第一、一二参照)のように、会社の就業規則六六条一項には、会社は、「業務の都合により従業員に対し転勤、職場、職務の変更を命ずることがある。」との規定が存在するのであるから、労働契約締結に際して、申請人は、会社が一方的に職務内容の変更を命ずることを予め同意していたものと解されないこともない。しかしながら、就業規則中に右のような一項目を設けたからといつて、従業員が無制限に職務の変更を予め承諾し、会社側に一方的な職種の変更権を与えたものと解するのは相当ではなく、そこには自ら一定の限界があるものというべく、その限界は、当該労働契約締結の際の事情、従来の慣行、当該配転における新旧両職務間の差異、特に技術者においては、その過去の経歴に照らして将来にわたる技術的な能力、経歴の維持ないし発展を著しく阻害する恐れのあるような職種の転換であるかどうかを綜合的に判断して、合理的であると考えられる範囲において画されるべきものであり、その限度においてのみ、従業員が職務内容の一方的な変更権を使用者に与える旨同意したものと解することができるが、それ以上の著しい職務内容の変更は、もはや使用者の一方的になしうるところではなく、従業員の当該配転に対する個別的な同意があつて、初めて有効になしうるにすぎないものというべきである。