全 情 報

ID番号 04262
事件名 地位保全等仮処分申請事件
いわゆる事件名 岩手観光バス事件
争点
事案概要  バス運転手として試用期間二カ月として採用された者が、「諸般の事情」により解雇され、その効力を争った事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 労働契約(民事) / 試用期間 / 本採用拒否・解雇
裁判年月日 1969年8月14日
裁判所名 盛岡地
裁判形式 決定
事件番号 昭和44年 (ヨ) 163 
裁判結果 認容
出典 時報569号88頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働契約-試用期間-本採用拒否・解雇〕
 申請人等と被申請人との間の試傭期間中の雇用関係は、当初より期間の定めのない雇用契約(本契約)であり、試傭期間中は、会社において従業員としての適格性を調査し、業務不適格者と認めるときは解雇することができる旨の解雇権が留保されているものと認められる。
 しかして、会社の前記試採用取消の意思表示は、解雇の意思表示にほかならないが、右解雇権の行使は合理的な理由(業務不適格を理由とするのであればその判断が社会通念に照らし合理的な場合でなければならない)に基づくのでなければならないと解するのが相当である。
 そこで進んで、被申請人の試採用の取消(解雇)が合理的な理由に基づいているか否かについて判断するに、前記のように、申請人等に通知された解雇理由は、「諸般の事情………」ということであるが、業務不適格と認め得るのは、就業規則所定の欠格事由、解雇事由に該当する事由のある場合のほか、予定の能力、技能、熟練を備えていないような場合であると認められるが、右のような事由が申請人等に存することについては何等の疎明がない。かえって、申請人等が従前被申請人の姉妹会社であるA株式会社(被申請人は昭和四三年三月右会社から分離独立した)の労働組合の幹部であった関係で、申請人等が被申請人の労働組合に加入することを、右A株式会社の労働組合が嫌忌し、右会社に圧力を加えるに至ったため、被申請人が、A株式会社の今後の運営に支障を生ずることを虞れ、申請人等の試採用を取り消す挙に出たものであることが認められる。
 右事実によれば、本件試採用取消の意思表示は、合理的な理由に基づくものとは到底認め難く、ほかに合理的な理由を有することについては、何等の疎明がないから結局、右試採用取消の意思表示は無効であるといわなければならない。