ID番号 | : | 04266 |
事件名 | : | 地位保全等仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 後藤ナット製作所事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 地方から出てきた若い従業員が組合を結成したところ会社側で父兄達を呼び寄せて切り崩しの説得をさせたうえ、先輩格の者が退職を迫ったというケースで退職願いに署名した者がその効力を争った事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 民法96条 |
体系項目 | : | 退職 / 退職願 / 退職願と強迫 |
裁判年月日 | : | 1969年10月28日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和42年 (ヨ) 2212 |
裁判結果 | : | 認容 |
出典 | : | 時報590号87頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔退職-退職願-退職願と強迫〕 申請人らは、従業員の面前で、社長から銀行が年末一時金のための融資を拒絶した旨告げられ、社長が急遽銀行に赴いた直後Aはじめ同席の従業員から申請人らの組合結成並びに組合活動が従業員の生活をおびやかす結果に至ったものであるとの理由で、その責任を追及され、会社を退職すべきことを強く要求されたのである。このような情況の下で、若年の申請人らが不法な強いAらの発言により、自ら行った正当な行為に疑問を懐き、遂には、自らが真実に不法な恐るべき行為を犯したのではないか、真実に従業員に対して責任を負うべきではないかとの畏怖の念を懐くに至ったことも明らかである。Aらは申請人らのかかる心的状態につけ込み、その場にいたたまらず寮の自室に退いた申請人らに追従し、寮に居ることを強制しながら執拗に退職願の作成提出方を迫ったのである。申請人らは、口頭で多少の抵抗を試みたが遂に全員退職願に署名しこれを会社に提出したのであるから、右作成提出はAらの違法な脅迫により畏怖のあまり行ったものというべきである。 而して、昭和四二年一月一四日頃会社に内容証明郵便が到達したことは当事者間に争いがなく、郵便官署作成部分について争いがなく、その余の部分につき《証拠略》によれば、右内容証明郵便には、申請人らの名義で、「昭和四一年一二月二一日に通知人等が貴殿に対して退職願を提出しましたが、これは貴殿の不当労働行為にもとづくものであって無効であります。したがって右同時に行われた通知人等に対する解雇処分を速やかに取消し、就労させることを強く要求します。」との趣旨の記載があり、右意思表示は、先きになした申請人らの退職申込の意思表示を取消す趣旨をも含むものと解されるので、右内容証明郵便が会社に到達した時に退職申込の意思表示は有効に取消されたものというべきである。しからば、右合意解約は右取消により無効に帰したものである。 |