ID番号 | : | 04269 |
事件名 | : | 仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 高知放送事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 民間放送会社の報道部に勤務し、デスク業務の補助ないしテレビ用文字の作成等の業務に従事する共かせぎの夫に対する遠隔地の支店営業部への配転命令の効力が争われた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 |
体系項目 | : | 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令の根拠 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令権の限界 |
裁判年月日 | : | 1969年11月15日 |
裁判所名 | : | 高知地 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 昭和44年 (ヨ) 58 |
裁判結果 | : | 却下 |
出典 | : | 労働民例集20巻6号1476頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 渡辺章・ジュリスト471号147頁 |
判決理由 | : | 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令の根拠〕 一般に労働契約においては、労働者はその労働力の使用を包括的に使用者に委ねるものであるから、労務の種類・提供場所などは、特にこれを特定する旨の合意のない限り、それらを個別的に決定する権限は使用者が有するものと解される。しかし、労務の種類ならびに提供場所は、賃金や労働時間などとともに重要な労働条件に当り、労働契約の要素をなすものであることは明らかであるから、使用者が右権限を行使して労働者に対しその職種ないし職場の変更を命ずるいわゆる配置転換命令は、単なる指示または指揮命令にとどまるものではなく、労働条件を一方的に変更させもつて労働契約の内容をも変更するところの、形成的効果を生ずる意思表示と解するのが相当である。 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令権の限界〕 使用者は、特別の合意がない限り業務上の必要性に基づいて一方的に従業員の配置転換を決定しうることは前示のとおりであるが、これによる職種ないし職場の変更は労働者の生活関係に重大な影響を与えることがあるから、使用者の右権限の行使も労使間を規律する信義則に照らして合理的な制約を受けるものというべく、右制約を逸脱した権限の行使はその効力を生じないものといわなければならない。ところで、被申請会社の就業規則中には 第一二条 従業員の異動については、会社・従業員およびその従業員の所属する職場の都合を慎重に勘案してこれを行なう。 1 従業員は会社が業務の運営上必要がある場合に転勤を命じ、或いは職場または職種の変更を命じたときはこれに従わなければならない。(以下省略) との規定があることが疎明されるが、右条項は、前示当然の事理を具体化したもの、すなわち転勤等が当該従業員の生活などに多大の影響を及ぼす場合のあることを考慮し、被申請人はこれを命ずるについては業務上の必要性のみならず当該従業員の個人的事情も無視することなく十分配慮することを明らかにしたものと解すべきである。そうすると結局、具体的な事案における配転命令が適正であるか否かは、使用者の業務上の必要性の程度と当該従業員の受ける不利益の度合とを比較衡量したうえ、その権限行使の過程における双方の態度などをも総合的に判断して決せられるべきものである。 |