全 情 報

ID番号 04273
事件名 仮処分異議控訴事件
いわゆる事件名 京急横浜自動車事件
争点
事案概要  組合間の対立により待期とされ、その間他の会社で就労していたタクシー運転手が、「会社の承認を得ないで在籍のまま他に雇入れられたとき」との懲戒解雇事由に該当するとして懲戒解雇された事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 二重就職・競業避止
裁判年月日 1969年12月24日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和43年 (ネ) 965 
裁判結果 一部棄却,一部変更
出典 労働民例集20巻6号1750頁/時報587号83頁/東高民時報20巻12号271頁/タイムズ244号180頁
審級関係 一審/04291/横浜地/昭43. 4.15/昭和41年(モ)1867号
評釈論文 浜田冨士郎・労働判例百選<第三版>〔別冊ジュリスト45号〕96頁
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-二重就職・競業避止〕
 就業規則三一条一〇号が懲戒解雇事由の一として「会社の承認を得ないで在籍のまま他に雇入れられたとき」と定めるのは、従業員が就業時間中は勿論のこと就業時間外においても他と継続的な雇傭関係ないしこれに準ずる関係に入るときは、その者の会社に対する誠実かつ完全な労務の給付が困難となり、経営上支障を来すことから、使用者において企業秩序を維持するため、一律にこれを禁ずる趣旨のものであると解するのを相当とするから、被控訴人らが、右認定のようにA会社及びB会社に雇われて働いたことは、右就業規則条項に該当するものといわなければならない。被控訴人らは、右の稼働は臨時のいわばアルバイトに過ぎないと主張するけれども、その然らざることは既に認定したところから明らかである。
(中略)
 一方、会社の前記就業規則三一条一〇号の趣旨は前に認定したとおりであるが、本件においては被控訴人らは待期扱とされ、本来の業務に就き得なかつたのであるから、同人らが既に認定したように他で稼動したとしても、右就業規則の意図した生産性の維持という目的に直接には相反することがなかつたものというべきである。
 他方、被控訴人らが会社に対し就労させるよう要求を重ねるのみで自らの努力により局面の打開を図ろうとはせず、待期扱となつた一か月後には早くも会社に無断で他で稼動するに至つたことは経営秩序を紊るもので軽率失当の譏を免れないけれども、会社が同人らに対する待期扱という不当の措置を是正するの挙に出ないまゝ、待期扱による不利益を緩和するためにした被控訴人らの前記所為を就業規則条項に該当するとしてこれを懲戒解雇したことは、徒らに同人らの非を責めるにのみ急なものであつて、酷に失するといわざるを得ない。
 従つて、被控訴人らに対する本件解雇は解雇権の濫用であつて無効であり、同人らは会社の従業員たる地位を有するものというべきである。