全 情 報

ID番号 04277
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 横浜ゴム事件
争点
事案概要  工員から販売、倉庫業務への配転命令につき、職種に関する暗黙の合意があったとはいえないとして、右命令を拒否する懲戒解雇を相当とした事例。
参照法条 労働基準法2章
労働基準法89条1項9号
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令の根拠
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務命令拒否・違反
裁判年月日 1968年1月31日
裁判所名 津地
裁判形式 判決
事件番号 昭和41年 (ヨ) 20 
裁判結果 却下
出典 労働民例集19巻1号65頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令の根拠〕
 右事実に徴すると右申請人らは終始工員として働く趣旨で採用されたとも言い難く、職種に関する暗黙の合意も認め難く再び元の職場への復帰も可能であることを考え合せると右申請人らの同意なくしてなされた配転命令も労働契約外への配転であるから無効であるとは解されない。この点に関する右申請人らの主張も採用出来ない。
〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-業務命令拒否・違反〕
 最後に申請人らは懲戒規程に該当するような行為をしていないからそれに該当するとした懲戒解雇の意思表示は無効であると主張するので判断する。
 会社が申請人らに対し従業員賞罰規則第一六条第二号申請人中西に対し同規則第一六条第一号をも併加して懲戒解雇する旨の意思表示をしたことは当事者間に争いがない。申請人らは右規則第一六条第二号にいう「重大な損害」を会社に与えていないと主張するが成立に争いのない疏乙第二号証、証人大戸正幸の証言により成立の認められる疏乙第三四号証の一ないし三及び証人A、同Bの証言を綜合すると申請人らが配転を拒否したことにより配転計画にそごを来たし、その補充をしなければならなかつたこと昭和四一年一月八日開かれた賞罰委員会において申請人らの行為は就業規則第一二条、第七五条に違反し、申請人らの右就業規則違反が賞罰規則第一四条ではなく第一六条二号に該当するとしたのは本件の配転は企業再建のための業務を円滑に行う必要上行われたものであつて転勤命令に従わなかつたことにより業務の運営を阻害した、業務運営の阻害は経営上重大な損害であるとして全員一致で懲戒解雇にしたことが一応認められ、右認定に反する申請人ら本人尋問の結果及び申請人らの陳述書は措信しない。
 右事実に徴すると会社の蒙つた重大な損害については具体的な金額は見当らないが会社の危急存亡に関する重大な時期に正当の事由なく企業再建のための配転を拒否し、業務運営を阻害したことは「重大な損害」を与えたというべきである。