ID番号 | : | 04279 |
事件名 | : | 損害賠償請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 渡辺鋼材事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 労働災害にもとづく損害賠償請求につき、代表取締役に商法二六六条ノ三第一項前段にいう職務を行なうにつき重大な過失があったとされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 商法266条の3第1項 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任 |
裁判年月日 | : | 1968年2月14日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和40年 (ワ) 4322 |
裁判結果 | : | 一部認容,一部棄却 |
出典 | : | 下級民集19巻1・2合併号80頁/タイムズ221号186頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務・使用者の責任〕 右認定事実によれば、本件事故の原因をなした砲弾様鉄塊は完全な砲弾ではなく、また、A会社検査員の検査を経たものであるから、単なる打撃や接触のみによつて爆発する危険性がないことは当然であるとしても、右検査の内容、方法、等が具体的に明らかではなかつた本件においては、右鉄塊内部に火薬物が混入している可能性は絶無とはいえないのであるから、これにガス熔接機等による火力をあてる時は人間の生命を奪うに足るだけの爆発事故が生じる危険性は存在していたのであつて、被告Yもこれを認識していたか少くとも認識する可能性はあつたものというべきである(鉄鋼メーカーが本件の砲弾様鉄塊については解体された後のものでなければ、輸入商社等からこれを受取ることをしなかつたことが前記認定の事実から窺われるのであつて、こうした事情からも危険性の存在についての認識は可能であつたと思われる)。果してそうだとすれば、被告Yとしては右鉄塊の解体作業を従業員に命ずる場合においては、当該従業員にその経験の有無を確かめるべきは当然であつて、特に原告Xのような未経験者に対しては、空洞のない砲弾様鉄塊を解体の対象から除外するよう強く指示し、右作業経験の深い現場監督Bをして安全性の確認ができる砲弾様鉄塊を原告Xのために選別してやるべく指示する等の措置をとり爆発による事故の発生を未然に防止すべき義務があつたものというべきところ、本件の砲弾様鉄塊は全て安全なものである旨軽信して何ら右措置に出ることなく、慢然と解体作業を命じたにすぎない被告Yには、重大なる過失があつたものといわざるを得ない。 三 ところで前項で認定した事実によれば、被告Yは職務執行の過程において、従業員たる原告Xに解体作業を命じたものであるから、その「職務を行うにつき」同原告に損害を加えたものであること明らかであつて、従つて被告会社は商法第二六一条三項、七八条二項、民法四四条一項により、又、被告Yは商法二六六条の三の一項により、各自連帯して(被告両名の関係は商法二六六条の三による)本件爆発事故により原告両名が蒙つた損害を賠償すべき義務がある。 |