ID番号 | : | 04280 |
事件名 | : | 仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 広島化成事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 職場内男女関係による解雇につき、懲戒解雇事由に該当するものを通常解雇にしたものであるが、有効とされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 労働基準法89条1項9号 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 風紀紊乱 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒解雇の普通解雇への転換・関係 |
裁判年月日 | : | 1968年2月14日 |
裁判所名 | : | 広島地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和42年 (ヨ) 450 |
裁判結果 | : | 却下 |
出典 | : | 労働民例集19巻1号101頁/時報516号76頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 宮本安美・法学研究〔慶応大学〕42巻2号118頁 |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒解雇の普通解雇への転換・関係〕 成立に争いのない乙第三号証の被申請人会社就業規則第六一条に、「従業員が左の各号の一に該当するときは三十日前に予告するか又は三十日分の平均賃金を支給して解雇する一、精神若しくは身体に故障があるか又は身体虚弱若しくは疾病のため業務に堪えないと認めるとき二、已むを得ない業務上の都合によるとき三、その他前二号に準ずる已むを得ない事由があるとき」と定めてあることからすると、右解雇事由は従業員の非行を対象としたものとはいいがたいから、申請人の前記所為は右通常解雇事由に該当しないというべきであるが、右所為が従業員の非行を事由とする懲戒解雇事由に該当する場合は、これを懲戒解雇としないで、被解雇者にとり懲戒解雇より有利な通常解雇とすることは許容されると解するを相当とする。 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-風紀紊乱〕 そこで、申請人の前記所為が被申請人の就業規則所定の懲戒解雇事由に該当するか否かにつき検討するに、申請人の前記Aとの情交が婚姻を前提とするものであつたとの疎明はなく、申請人が第二ロール課工長、労働組合の組合長として、指導的立場にありかつ妻子を有しており、一方Aが未成年の女子工員で被申請人の独身女子寮に入寮中であつたこと及び前掲乙第一号証によると、前記情交は申請人が積極的にその機会を作出したものと疎明され、前示のとおりAが右事件を契機として退職したこと、真正に成立したと一応認めうる乙第一一ないし第一五号証、乙第一七号証の一、二、乙第二一号証、乙第二六号証、証人Bの証言により疎明される被申請人会社がゴム履物、ゴム工業用品、化成品等の製造を業とし、従業員約二、〇五〇名を有し、作業内容、賃金政策上、半数弱は中、高等学校卒業の年少女子を雇傭しているもので、近時、右年少女子の就職希望者が減少の傾向にあるため、被申請人においてはこれが対策に重点的配慮をしていること、本件情交関係が被申請人会社の従業員父兄間に被申請人会社の風紀に対する不信感を与え、被申請人会社の女子従業員の確保に支障を及ぼすおそれのあることを考慮すると、申請人の所為は、前記乙第三号証の被申請人の就業規則中懲戒解雇事由の定めである第九七条第九号の「不正不義の行為を為し従業員としての体面を汚したとき」第九八条第一〇号の「前条各二号乃至第一一号に該当しその情状の重いとき」にあたると認めるのが相当である。そして、被申請人が本件解雇につき、就業規則第九九条所定の懲戒委員会の議を経ていることは前示のとおりである。 四 申請人は本件解雇が不当労働行為であると主張するところ、被申請人会社は申請人の活溌な組合活動を嫌悪し、種々申請人ら組合幹部に対し、懐柔工作を行つたことは疎明しうるが、以上説明したところと二掲記の各証拠並びに弁論の全趣旨によると、被申請人の本件解雇の決定的要因は、申請人の前記非行を理由とするものというべきであり、申請人の労働組合長であつたことまたはその組合活動が本件解雇の決定的要因となつたものとは疎明しがたい。 五 以上の次第で、本件解雇の無効を前提とする申請人の本件仮処分申請はいずれもその被保全権利の疎明がなく、右疎明に代え、立保証により仮処分をなすべき場合にあたらないと認められるから、いずれも却下すべきである。 |