ID番号 | : | 04287 |
事件名 | : | 損害賠償請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 中部機械製作所事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 本件雇傭契約は労基法の適用をうけるから退職については民法六二六条は適用されず、予告後二週間の経過により当該契約が終了したとされた事例。 製品開発のために入社した設計課長との契約は請負契約ではなく雇傭契約であり、依頼された仕事を完成しなければ債務不信行になるという意味の仕事完成義務を負担するものではないとされた事例。 競業避止義務違反などを理由とする損害賠償請求につき、退職後の競業他社への再就職を禁止する特権はないとされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 民法623条 民法626条 民法627条 民法632条 |
体系項目 | : | 労基法の基本原則(民事) / 労働者 / 委任・請負と労働契約 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 競業避止義務 退職 / 任意退職 |
裁判年月日 | : | 1968年3月27日 |
裁判所名 | : | 金沢地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和39年 (ワ) 341 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 時報522号83頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔退職-任意退職〕 (一) 然し先ず(4)の「退職制限」に関する原告会社の主張は理由がない。即ち、原告会社の主張によっても本件雇傭契約においてはいわゆる最小期間の定が明示されてないのであるから、被告はいつでも何ら特別な理由を要せず右契約の解約告知をすることができる。従って原・被告間の雇傭関係は原告会社の承諾の有無に拘らず被告が退職申出をしたことに争いのない昭和三九年八月四日から二週間を経過した同月一八日に終了したことになる。 この点につき原告会社は本件雇傭契約については民法六二六条を適用すべきものと主張するが、本件雇傭契約が労働基準法の適用を受くべきことは原告会社の主張自体によって明らかであるから同法一四条、一三条によって民法六二六条の規定は適用し得ず、また被告はジェット式自動洗びん機の設計完了迄原告会社の承諾なしに退職できないという主張も、被告が原告会社に雇われたのは技術部設計課長として原告会社の現製品の改良および新製品の開発(ジェット式自動洗びん機を含む)という一般的事項を目的としたもので、ジェット式洗びん機の設計という特定事項の完成を目的としその完成迄の期間を明示して雇われたものでないことは原告会社の主張自体によって明らかであるから、被告は右設計完了迄原告会社の承諾なしに退職できないという主張もまた理由がない。 〔労基法の基本原則-労働者-委任・請負と労働契約〕 ところで原告会社は被告に対する右業務命令によって被告がジェット式自動洗びん機の設計を完成する義務を負ったと考えているようであるが、右命令によって原・被告の関係が雇傭から請負に変ったものではないから、被告としては設計課長(従業員)として会社の右命令に忠実に従い作業をすれば足り、請負人の如く依頼された仕事を完成しなければ債務不履行になるという意味での仕事完成義務を負担したものではない。 従って前認定のとおり被告が原告会社の命令に従い右洗びん機の設計業務に従事していた以上、それがたまたま線図作成段階に止まり設計図を完成するに至らず退職したからといって被告に雇傭契約上の義務違反の問題は生じない。 〔労働契約-労働契約上の権利義務-競業避止義務〕 (三) 次に(6)の競業避止義務についてであるが、一般に労働者が雇傭関係継続中、右義務を負担していることは当然であるが、その間に習得した業務上の知識、経験、技術は労働者の人格的財産の一部をなすもので、これを退職後に各人がどのように生かし利用していくかは各人の自由に属し、特約もなしにこの自由を拘束することはできないと解するのが相当である。 そして原告会社主張の本件契約条件(6)は《証拠略》によっても、それは被告が原告会社に設計技師として雇われ勤務中の期間当然に遵守すべき義務を注意的に述べたにとどまり、それを超えて被告の退職後も右趣旨の義務を課し競業他社への再就職を禁止する特約をしたものと迄は認め難い。 してみれば原・被告間の雇傭関係が被告の解約申入によって昭和三九年八月一八日をもって終了したことは前記のとおりであり、被告がA会社に就職したのは証人Bの証言と被告本人尋問の結果によれば同月二〇日と認められこの認定に反する証拠はないから、先に述べた理由によって被告に競業避止義務違反はなく、原告会社の主張は採るを得ない。 |