全 情 報

ID番号 04289
事件名 休職処分無効確認等請求事件
いわゆる事件名 神戸野田奨学会事件
争点
事案概要  職場結婚を理由とする私立高・中学校の女子教諭に対する休職処分が無効とされた事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 風紀紊乱
裁判年月日 1968年3月29日
裁判所名 神戸地
裁判形式 判決
事件番号 昭和41年 (ワ) 485 
裁判結果 認容
出典 労働民例集19巻2号507頁/時報518号79頁
審級関係
評釈論文 山口浩一郎・ジュリスト436号160頁
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-風紀紊乱〕
 仮に使用者に解雇の自由があるとしても、被告は本件の場合その処分の事由として、被告学校では教諭が職場結婚した場合どちらか一方が退職する慣行があり原告はこれに従つて退職すべきであることを挙げて、右処分の有効性を主張しているのであるから、これについて考えるに、まず本件処分は慣行に基づいてなされたというのであれば、使用者である被告は具体的にその慣行の存在及び内容を明確にしなければならないのであるが、右慣行の認めがたいことは前記三で説示したとおりであり、また仮に右主張のような慣行が存在するとしても、その合理性は問題である。次に本件処分は右主張事実をもつて処分の事由としたというのであれば、右主張事実については原告が職場結婚したことは前示のとおり争いなく、被告学校ではこれまで職場結婚した場合その一方が退職したことは前記二の(一)で認定したとおりであるから、続いて右事実を処分事由としたことの合理性が問題となる。即ち職場結婚を解雇の事由としたことは、配偶者の選択の自由に影響を及ぼし結婚の自由を制限することになるから、かかる事由が適法であるとされるためには、そこに合理的理由の存在することを必要とし、これを欠くときは当該解雇は無効であるとされるのは当然である。この点につき被告学校の職員の一部では職場結婚して夫婦が共に在職することは好ましくないと考えられていたことは前記二の(一)で認定したとおりであるにしても、しかしながらこれだけでは右合理性を肯定するには充分ではなく、他方前掲証人Aの証言によれば、同人は他の二、三の女子高校では夫婦とも教員として同じ学校に勤務している例があり、しかもある高校ではむしろこれが奨励されていたという事実をうかがうことができるのであるから、被告において右事由の合理的理由につき特段の立証のない限り、右は消極的に解するほかなく、本件処分は合理的理由を欠くことに帰し無効であるといわねばならない。更に、本件が右事由以外の解雇事由によりこれを告げないでした解雇処分であるというのであれば、これが、使用者の有する解雇権の当然の行使であるとしても、裁判上争われるに至り相手方がその無効事由を主張している場合には使用者においてその事由を明らかにしない限り、使用者は解雇処分の効力につき不利益に推定されるようになるというべきであるから、本件の場合には他に主張立証のない以上その事由は明らかでなく、従つて権利の濫用にあたるものとの事実上の推定を受けることを免れることができない。
 そうだとすれば、本件休職処分はこれを解雇処分としての側面についてみても結局有効であるといえないことになり、いずれにしても本件休職処分は無効であると判断せざるをえない。