ID番号 | : | 04290 |
事件名 | : | 損害賠償請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 村井工業事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 工員の旋盤による事故につき、会社の損害賠償責任が認められた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 民法709条 民法717条 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任 |
裁判年月日 | : | 1968年3月29日 |
裁判所名 | : | 奈良地葛城支 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和41年 (ワ) 13 |
裁判結果 | : | 一部認容,一部棄却 |
出典 | : | 時報539号58頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務・使用者の責任〕 近代的な企業活動はそれぞれに内在する高度の危険性から場合によって不可避的ともいえるような損害を惹起することが多い。この種の損害は行為者の故意過失の立証も困難を伴いがちであり従って過失責任を前提とする限り被害者の保護は不安定となりその結果としていわば他人の不利益において企業の利益をはかるともいえる極めて不公平な事態を招くことが少くない。工場の災害によって労働者に災害を生じたときは災害補償として一定額までの補償を得られるのであるがこれを超える財産的損害または慰藉料を請求する場合過失責任を原則とする民法の不法行為によるときは被害者の保護につきなお十分ではない。民法第七一七条は土地の工作物等の占有者および所有者の責任を規定しているが土地の工作物とは土地に接着して人工的作業を加えることによって成立した物をいうとされており機械のように工場内に据え付けられたものはこれに包含しないとされているけれども工場内の大きな機械のようなものは実質的には建物と一体をなしているものであり工場の建物を基礎とする企業設備は全体として土地の工作物となると解し危険性の高い工場企業により高度の安全性確保の義務を課し企業者に無過失責任を認めることが労働者の十分な保護に欠くべからざるものであると考えるべきであるからこの点からしても被告会社はその責を免れるものではない。被告会社代表者本人尋問の結果により認められるように被告会社は当地方の上級企業と自称しているに拘らず多年勤務した原告に対し原告の過失ときめつけ原告の要求により漸く退職金として金三〇、〇〇〇円を交付して事足れりとしていることにかんがみ更にその感を深くする。 よって被告会社は原告に対し原告の本件事故によって蒙った損害につき賠償する義務がある。 |