ID番号 | : | 04295 |
事件名 | : | 損害賠償請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 損害賠償請求事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 自動車事故による損害賠償請求につき、年次有給を喪失したことを平均賃金額の損失とはいえず、慰藉料の算定に当り考慮すべき事項とされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法39条 民法709条 自動車損害賠償保障法2条 自動車損害賠償保障法3条 |
体系項目 | : | 年休(民事) / 年休権の喪失と損害賠償 |
裁判年月日 | : | 1968年6月17日 |
裁判所名 | : | 長野地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和42年 (ワ) 4 |
裁判結果 | : | 一部認容,一部棄却 |
出典 | : | 時報540号60頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔年休-年休権の喪失と損害賠償〕 (4) なお、《証拠略》によれば、原告は、昭和四〇年度(昭和四〇年四月一日から昭和四一年三月三一日までの間)は、前年度繰越分四・五日分を加えて二二・五日の年次有給休暇の権利を有していたが、右のうち七日は本件事故による傷害の治療のための欠勤日に振替えたこと、そして、昭和四一年度には、前記長期欠勤のため、前年度の出勤率が全労働日の八割未満となったため、就業規則の定めるところにより、右欠勤がなかったならば与えられた一九日の年次有給休暇を取得することができなかったことが認められる。ところで、原告は、右各日数に応じた一日平均賃金の合計額相当の損害を受けた旨主張するのであるが、月給制により賃金が支払われている場合には、長期間の欠勤は別として、年間を通じて右に原告が主張する程度の欠勤があっても必ずしも賃金カットをしない取扱いがかなり一般的に行われていることは顕著な事実であり、《証拠略》によれば、その趣旨は必ずしも明らかではないが、原告の勤務する会社では一箇月に三日以上欠勤した場合には一日とみなされて基本給から減額されるとの取扱がなされているように認められるから、前記のとおり年次有給休暇を制度本来の目的以外に利用すること(年次有給休暇の制度は、労働者の将来の労働力の維持培養を目的とするものであるから、病気療養等による欠勤を年次有給休暇に振替えることは制度の趣旨から決して望ましいことではない)を余儀なくされたことにより、実質的にはその日数だけの年次有給休暇を失ったと同視すべきこととなり、或は、或年度の年次有給休暇を全部失ったとしても、これによって蒙る不利益は、さもなければ、利用し得た年次有給休暇の利用の途が塞されたため、少くとも右各年次有給休暇の日数に応じただけ欠勤として取扱われる日数が増加することになり、これが将来の昇給、昇格、賞与の査定等に影響を及ぼす可能性をもつことあるに止るものというべきであり、しかも、かかる不利益は、かなり不確実な要素を多分に含むものであるというべであるから、前記の各年次有給休暇を失ったことにより原告の蒙った損失が直ちに右各日数分の一日当り平均賃金額に合致するとの原告の見解には与し難い。むしろ、かかることによって、原告が蒙るであろう不利益は、後記認定の慰藉料の算定に当り考慮すべき事項であると思料するので、この点に関する原告の主張は採用しない。 |