全 情 報

ID番号 04318
事件名 未払賃金等請求事件/右反訴請求事件
いわゆる事件名 マルマン事件
争点
事案概要  アメリカでの営業活動と現地法人設立のために派遣社員が、滞米中の給料および海外派遣手当の支払いを本国法人に請求したことにつき、右請求が認容された事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約の承継 / 新会社設立
賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 二会社との雇用契約と賃金請求権
裁判年月日 1968年12月14日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和41年 (ワ) 11653 
昭和42年 (ワ) 12023 
裁判結果 認容
出典 時報548号97頁
審級関係
評釈論文 窪田隼人・判例評論126号34頁
判決理由 〔労働契約-労働契約の承継-新会社設立〕
〔賃金-賃金請求権の発生-二会社との雇用契約と賃金請求権〕
 (一) 被告は、現地法人設立後の原告に対する給与は、同法人が支払義務を負う旨の約定が原、被告間で成立したと主張するが、《証拠判断略》《証拠略》によると、現地法人設立後の原告に対する給与が同法人名義の銀行口座から支払われていることは明らかであるが、同法人は、被告が全額(二〇、〇〇〇ドル、円換算七、二〇〇、〇〇〇円相当)出資して設立し、社長は被告の専務取締役が就任し、米国駐在員も原告ほか一名の被告社員が充てられ、被告商品の米国における販売を目的としており、前記口座も、従前原告の個人名義であったものを同法人が発足したためその名義で開いたことが認定でき、これを左右する証拠はないから、以上のような被告と現地法人との関係からすると、前記口座から給与が支払われたことから直ちに被告主張の約定の成立を推認することはできず、他にこの点の証拠はない。
 (二) 被告は同四一年四月一日付で、原告を解雇した旨主張するが、被告の全立証によっても、右解雇の意思表示が原告の本訴請求にかかる同年九月一二日までに同人に到達したと認めることはできない。(《証拠略》によっても、原告が被告から自然退職の取扱をされていることを同年五月一三日頃知っていた事実が認定できるにとどまる。)
 以上により、被告の抗弁はいづれも理由がなく採用できない。
 三 一で述べたところと、前掲尋問の結果から認定できる原告が同四一年九月一二日被告に退職する旨申し入れた事実からすると、被告は原告に対し、渡米以降同年九月七日までの前記手当、同月一二日までの俸給を支払うべき義務があるところ、同年三月末日までの俸給(後記の一部未払分を除く)と同年四月二四日までの前記手当が支払済であることは当事者間に争いがなく、同四〇年一二月分につき二五、二八〇円の未払分があることは、《証拠略》から明らかであるから、結局、被告は原告に対し右支払分を控除した残額を支払うべきであり、同額が本訴請求額になることは計算上明らかである。
 よって、被告は原告に対し俸給等一、〇五三、三八〇円とこれに対する本訴状送達の翌日であることが記録上明らかな同四一年一二月九日から完済まで年五分の法定利率による遅延損害金を支払う義務があり、原告の本訴請求は理由があるから認容すべきである。