ID番号 | : | 04320 |
事件名 | : | 雇傭関係存続確認請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 昭和石油事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | レッド・パージにかかわる会社の退職勧告と退職届の提出にともない、本件では労働契約の合意解約が成立したもので心裡留保は認められないとされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 労働基準法3条 日本国憲法14条 |
体系項目 | : | 退職 / 合意解約 退職 / 退職願 / 退職願と心裡留保 |
裁判年月日 | : | 1968年12月24日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和35年 (ワ) 7974 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 時報558号88頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔退職-合意解約〕 原告X1、同X2、同X3は、昭和二五年一〇月三〇日被告会社に対しそれぞれ同日付の退職届を提出したことは、当事者間に争いがない。《証拠略》によれば、右退職届はいずれも「私儀今般会社の都合に依り退職致します」との文言であることが認められる。 《証拠略》によれば、被告会社は昭和二五年一〇月三〇日右原告らの退職届を受理し、右原告らに対し(原告X3については翌三一日)本件通告の所定期限までに退職届を提出した場合と同様の退職金、予告手当および餞別を支払ったことが認められる(右金額の金員の授受自体は当事者間に争いがない。)《証拠判断略》 以上によれば、被告会社は本件通告による解雇の効力の発生を主張しないで右原告ら三名の退職の申込を承諾したもの、すなわち雇傭契約の合意解約が、成立したものというべきである。 (原告X4、同X5、同X6関係) 本件通告を受けた原告X4、同X5、同X6は、本件通告にかかる前記期限内である昭和二五年一〇月二八日午前中に被告会社に対しそれぞれ同日付の退職届を提出したことは、当事者間に争いがない。《証拠略》。によれば、原告X4の退職届は「私儀今般一身上の都合に依り辞職致し度此段御届け致します」、原告X5の退職届は「私儀今般会社都合に依り退職致します」、原告X6の退職届は「私儀会社の都合により退職致します」、との各文書であることが認められ、右退職届はいずれも本件通告にかかる前記期限内に前期勧告に応じて提出されたものであるから、原告らが右退職届を提出したことは、被告会社に対し雇傭契約の合意解約の申込をする旨の意思表示であると解釈すべきである。 もっとも、被告は右原告らにおいて被告の合意解約の申込を承諾したものというが、本件通告の文言は「来る一〇月二八日正午までに辞表を提出して円満に退職するよう勧告する」というのであるから、本件通告は原告らが自発的に退職の申出をすること、すなわち合意解約の申込をすることを勧告したものと解するのが相当である。被告の主張は要するに原被告間に解約契約が成立したというのであるから、原被告のいずれが右解約契約の申込をしたかの点について被告の主張と異る認定をしても差支えないものと考える。 《証拠略》によれば、被告会社が昭和二五年一〇月二八日右原告三名の退職届を受理し、右原告らに対し本件通告にかかる第一明細書記載の金員を交付したことが認められる(右金額の金員の授受自体は当事者間に争いがない。)から、被告会社は右原告ら三名の退職申込を承諾したものと認められる。 〔退職-退職願-退職願と心裡留保〕 1 《証拠略》によれば、本件通告当時、被告会社と組合との間に「被告会社は従業員の人事に関しては組合の同意を得てこれを行う」旨の労働協約があったところ、組合は昭和二五年一〇月二六日被告会社新潟工場で開かれた代議員大会において原告らに対する本件通告による整理も止むなしとしてこれに同意した事実が認められる。 2 《証拠略》によれば、本件通告直後、当時組合本社支部支部長であったAは原告X1、同X2、同X3に対し、当時組合品川支部書記長であったBは原告X4、同X5、同X6に対し、右三名の将来の就職のためにも、また退職金等の面でも有利であるからして、いずれも退職方を説得し、とくに、Aは、原告らの中で最も強硬に本件整理に反対していた原告X1に対し、昭和二五年一〇月二九日午後原告会社四階下の踊り場で、当時の状況として解雇が止むを得ないこと、早い時点でよい条件で退職する方が得策であるから自主的に退職するよう説得し、原告X1もこれを了承するに至った事実が認められる。 3 《証拠略》によれば、原告らは昭和二五年一〇月二八日から同年一一月八日までの間において組合を通じて被告会社に対し、就職の斡旋、退職金の増額とその税金会社負担、住宅保障と移転費会社負担、住民税二、三期分の支給を要求し、原告X1、同X2、同X3は昭和二五年一一月二五日、原告X4、同X5、同X6は同月二七日、いずれも市町村税名下に別紙第二明細書記載の金員を被告会社から受領し、ついで、原告らは同年一二月一四日頃いずれも特別退職者慰労金名下に、原告X1、同X4、同X5、同X6は各一万円、原告X2、同X3は各五千円を被告会社から受領した事実が認められる。 以上の事実によれば、原告らは、昭和二五年一〇月二八日又は同月三〇日頃退職するも止むなしと考え、退職の条件をよくするためには退職届を提出することが得策であると考え、本件雇傭契約終了の真意をもって前記退職届を提出したものと認められる。 |