ID番号 | : | 04322 |
事件名 | : | 仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 三井造船事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 養成工に対する技能訓練契約解除にもとづく解雇につき、右訓練契約は独立の労働契約ではなく、実技習得状況の不良を理由とする訓練契約解除は無効であり、それにもとづく解雇も無効とされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 職業訓練法15条 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 成立 解雇(民事) / 解雇事由 / 職務能力・技量 |
裁判年月日 | : | 1968年12月25日 |
裁判所名 | : | 岡山地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和40年 (ヨ) 180 |
裁判結果 | : | 認容 |
出典 | : | 労働民例集19巻6号1726頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 香川孝三・ジュリスト450号151頁 |
判決理由 | : | 〔労働契約-成立〕 以上のとおり認められ、格別反対の証拠はない。右の事実関係によると、会社は就業規則五四条に規定する従業員雇入れの方式の一つとして、職業訓練法一五条の認定に基づく期間三年の事業内職業訓練を行なう養成工採用制度をとりいれ、将来の現場における基幹工員として中学校の新規卒業者を慎重な選考手続を経たうえ養成工として採用していることが認められる。これに、前記認定の訓練期間中の教習および服務規律に関する実状、養成工から本工へ移行するに際しての会社の取扱い、養成工の組合内における地位等を併せ考えれば、養成工は一般従業員と同様に、永続雇傭を前提とした期間の定めのない労働契約により採用されたものであつて、ただ採用後約三年間の訓練期間が先行しているに過ぎないものと認めるのが相当である。したがつて、本件訓練契約は、右期間の定めのない労働契約から独立した別箇の労働契約として成立しているのではなく、あくまでも後者の内容の一部もしくはその付款として存在しているものとみるべきである。そして、乙第二号証、第三号証、第六号証の一によれば、就業規則六一条は一般従業員に対する通常解雇事由として、精神もしくは身体の障害により業務にたえないと認められるとき(四号)、労働能率がはなはだしく劣悪なとき(五号)、やむを得ない事業上の都合によるとき(六号)の三箇条を定めているが、養成工取扱規則九条は訓練契約解除事由として右就業規則六一条四号と同趣旨の一号の他、法令または従業員就業規則に違反する場合(二号)、訓練契約の約定に違反する場合(三号)、素質、能力その他修業の状況からみて、訓練目的に適応せずまたは成業の見込みがないと認められる場合(四号)の三箇条を定めており、さらに技能訓練契約書五項二号には、養成工が「養成工取扱規則九条各号の一に該当したとき、あるいは就業規則九七条ないし九九条(懲戒事由、懲戒解雇事由)に該当したときは訓練契約は解除され、従業員の資格を喪失する。」と記載されており、これに対応して就業規則六一条三号は訓練契約が解除されたときは解雇する旨定めていることが認められる。 〔解雇-解雇事由-職務能力・技量〕 したがつて、被申請人が申請人に対してなした本件訓練契約の解除は結局養成工取扱規則九条四号の適用を誤つたもので無効というべきであるから、これに基づく本件解雇の意思表示も、また申請人主張の不当労働行為の成否について判断するまでもなく無効であり、申請人はなお被申請人の従業員たる地位を保有しているものというべきである。 |