全 情 報

ID番号 04330
事件名 賃金仮処分申請事件
いわゆる事件名 岩田屋事件
争点
事案概要  違法なストを実行したとして会社から懲戒解雇され、地位保全・賃金支払の仮処分が認められていた者が、その後に生じた会社幹部に対する暴行を理由として予備的懲戒解雇とされその効力を争った事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
民事訴訟法(平成8年改正前)6編4章
体系項目 解雇(民事) / 解雇と争訟・付調停
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 暴力・暴行・暴言
裁判年月日 1967年3月31日
裁判所名 福岡地
裁判形式 判決
事件番号 昭和39年 (ヨ) 637 
裁判結果 却下
出典 タイムズ206号123頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-暴力・暴行・暴言〕
 八 会社就業規則第八二条には左記のとおりの条項があることが認められる。
 第八二条 左の各号の一に該当するときは懲戒解雇に処する但し情状によつては休職、減給に止めることがある。
 二 他人に対し暴行脅迫を与え又は其の業務を妨害したとき(同条第一号および第二号ないし第一〇号は本件と関係がないから省略する。)
 九 前示六で認定した一連の行為は全体として暴行的性質を強く帯有しており、全岩労の正当な組合活動と目する余地は全くなく、右事情の下で実行された申請人X1の六、2の所為、同X2の六、1および同、3の各所為が前認定の会社就業規則第八二条第二号前段に該当することは多言を要しないところで(中略)また前認定の暴行の各所為をその事情とともに綜合考慮すれば申請人らの所為に対し前示就業規則第八二条但書を適用しなければ著しく苛酷な結果となる等の特段の事情も認められず、従つて会社が懲戒権を濫用したものとも認められないから、前示予備的懲戒解雇は有効で申請の原因2に記載した第一次懲戒解雇の無効が確定されるとしても申請人らはおそくとも右予備的懲戒解雇の意思表示の翌日から完全に会社に対する雇用契約上の権利を失うこととなり、従つて同日より後である昭和三九年一二月分以降の賃金債権はいずれにしても発生するに由ないものとなる。
〔解雇-解雇と争訟〕
 一〇 なお申請人らは本件賃金仮払仮処分申請は前示当事者間に争ない申請人らが会社に対し雇用契約上の権利を有することを仮に定めた各仮処分判決に基づくものであつて、右各仮処分によつて定められた仮の地位から当然に申請しうるものと主張するが、先行する雇用契約上の地位保全の仮処分はたとえそれが確定してもなんら既判力を有しない結果その後の賃金仮払仮処分申請事件についてはその必要性についての判断は勿論被保全権利の存否の問題についてもなんら裁判所の判断を拘束する効力を有しないものと言うべきであり、従つて申請人らの右主張は採用するに由ない。