ID番号 | : | 04352 |
事件名 | : | 仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 愛電交通事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 道路交通法違反の疑いで取調べ中、警察官に対する態度が粗暴でそれが新聞に報道されたことを理由に解雇されたタクシー運転手がその効力を争った事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項3号 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 解雇事由 / 道交法違反 |
裁判年月日 | : | 1967年10月23日 |
裁判所名 | : | 名古屋地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和41年 (ヨ) 1509 |
裁判結果 | : | 認容 |
出典 | : | 労働民例集18巻5号1031頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇-解雇事由-道交法違反〕 右事実によれば、警官が申請人に道路交通法違反行為の疑ありとして、取調べ、免許証の提示を求めたのが違法、不法な行為であるとは見られない。他方、申請人が自分に法規違反の事実はないと信じ(たとえ、そう信じたのが事実の誤認ないし法の誤解によるものではあつても)、そう主張し抗争したこと自体を以て不当とはいえないが、その間の申請人の言動は争がながびくにつれてのいらだち興奮が加つたにせよ、些か粗暴にすぎ、穏当を欠いたものというほかない。しかし、附近に被申請人の固定客が少からず居住ないし勤務していたにせよ、それらの人々が右事件を直接見聞したとの疎明はないし、前記新聞記事は、申請人の行為に関する限り、前述のように簡略なもので、これがために乗客が被申請人のタクシーに乗車することをためらうに至るものとは断定できない(事実そのようなことがおこつたことを疎明すべき資料はない)。 とすれば、右四月七日の申請人の言動を以て被申請人の信用を傷けたものとし、あるいはその他申請人を被申請人企業から排除するのが相当と解すべき解雇事由あるものとはしがたい。 (中略) 申請人の右各行為はいずれも穏当なものとはいえないが、成立に争のない乙第一号証によつて疎明される被申請人主張就業規則の懲罰事由第三七条、第一号故意または重大な過失により会社および従業員に損害を与えたもの、第五号運転士にして交通法規を遵守せず、また従事する業務の責任重大の認識を欠くもので、解雇に価するものに当るとはしがたく、また被申請人企業ないしその秩序維持のため申請人の職を奪うのを正当とするにたりる事由に当るともしがたい(前記警官なり伊藤課長に対する申請人の態度はいかにも粗暴ではあるが、前認定のように特別の状況下のことであり、これを以て申請人が乗客などに粗暴な態度をとる性格の持主であるとは推認しえないし、一般顧客に対し申請人が粗暴な態度を示した事実の疎明はない)。 すなわち、被申請人がした解雇の意思表示は解雇を是認すべき正当事由を欠き、無効なものというべきである。 |