全 情 報

ID番号 04355
事件名 旅費請求控訴事件
いわゆる事件名 米海軍横須賀基地施設部事件
争点
事案概要  勤務場所からごく近い場所への出張につき規定の日額旅費を実費額まで減額しうるか否かが争われた事例。
参照法条 労働基準法11条
労働基準法3章
体系項目 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 特殊勤務手当
裁判年月日 1967年10月31日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和41年 (ネ) 1170 
裁判結果 棄却
出典 労働民例集18巻6号1088頁/時報503号68頁/東高民時報18巻10号170頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔賃金-賃金請求権の発生-特殊勤務手当〕
 駐留軍従業員の旅費は、基本労務契約締結以前は、国家公務員の旅費に準じて支給され、在勤地内の旅行の日額旅費としては最低日当額の三分の一ないし二分の一が支給されていたが、基本労務契約においては、在勤地内の旅行の日額旅費についても実費弁償的な面が強調され、右金額から約一割を減じた額が一応の基準として定められたこと、従来は、在勤地内の旅行の日額旅費が調整されて、減額されあるいは支給されなかつた例はほとんどなく、昭和三三年ごろ基地から二、三百メートルしか離れていないAに営繕工事に行つた事例について日額旅費を支給すべきか否かが問題になり、全駐留軍労働組合横須賀支部と労務管理事務所とが話合つた結果、Aを同一基地内の施設とみなして支給しないこととなつたが、その際両者の間に在勤地内の旅行の日額旅費については、基地からごく近距離の場所にある長官官舎やAへ出張した場合を除き、調整しないことにするという了解ができたこと、本件旅行のように電気工事等のため基地からB(本件基地からの距離は二・一キロメートル)へ出張した場合は、基本労務契約締結以前から昭和三六年三月まで日額旅費が規定通り、調整されないで、支給されていたことが認められ、右事実に当事者間に争いのない被控訴人主張の調達庁労務部長の通達が日額旅費を除く旅費について調整する場合の原則を規定している事実と在勤地内の旅行の日額旅費が時間数またはキロ数を基準として定められている事実とを合わせ考えれば、旅費調整の規定は本件旅行のような場合の日額旅費については適用しない趣旨で定められたものと解するのが相当である。
 何故ならば、日額旅費という特殊な支給形式が設けられたのは概ね支給額が低額であることが予想される場合につき実費弁償的処理をすることは事務処理を煩瑣にし能率的見地からみて得策ではないという考慮に基くものであつて(前記各証拠ことに当審証人Cの証言参照)、この支給形式を存続させながら減額調整を行い得るとすることは右にみた日額旅費の存在理由を空虚にするものであり、この制度と矛盾することになるからである。