全 情 報

ID番号 04369
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 社団法人全日本検数協会事件
争点
事案概要  就業時間中の組合活動による不就労を欠勤として取り扱い、就業規則の「最近六カ月を通じ欠勤が三〇日以上に及んだときは休職とする」旨の条項に基づいてなした休職処分の効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法2章
体系項目 休職 / 事故欠勤休職
裁判年月日 1966年3月16日
裁判所名 横浜地
裁判形式 判決
事件番号 昭和38年 (ヨ) 528 
裁判結果 一部認容,一部却下
出典 労働民例集17巻2号248頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔休職-事故欠勤休職〕
 債権者がモスクワの世界平和大会に出席したため欠勤したことをもつて、組合活動のため必要なものであつたとみることは相当でない。そもそも労働組合運動として保護される行為は、労働条件の改善に資するものでなくてはならぬところ右大会は世界平和評議会代表委員会の呼びかけによつて、「全般的軍縮と平和のための世界大会」と呼称して開かれた会議であること公知の事実であり、日本からの参加者も広く社会の各階層から出ていて、労働組合の代表者は数えるほどしかいなかつたこと債権者本人尋問の結果によつても明らかであるから、これに参加することが、組合活動としての労働条件の改善のためとは直接的つながりはなく、結局は政治活動とみるほかないからである。(なお、債権者は更に、右日数を組合活動のための不就労日として出勤扱いにすることを債務者も承諾していたと述べるけれども、疎乙第一七号証によれば、債権者は債務者に対し、右日数を届出欠勤として取扱われるよう申入れていることが認められ、また債務者が右のような承諾を与えたと認めるに足る証拠はないから、この主張は採ることができない。)しかし、前認定の六二日間のうち、右の二一日間を除いた残りの四一日間については疎甲第三三号証、疎甲第三四号証、債権者本人尋問の結果及び弁論の全趣旨を綜合すると、いずれも債権者主張のとおり組合活動、即ちオルグ活動、Aらの退職問題、並びにB労組共闘会議あるいは横浜港湾荷役労働組合連絡協議会のもとでの春闘、京浜労組結成運動、同労組による夏季一時金要求闘争、C退寮問題、D労働組合全国代表者会議出席、横浜地区労働組合協議会大会の幹事役として事務処理等に費やされて、そのため就労できなかつた(「並びに」以下列挙の事項については当事者間に争いない)ことが認められるので、結局この四一日間については、就業規則第三六条第二号所定の休職事由たる欠勤の扱いをすることができなかつたといわなければならない。
 してみると、本件で問題とされる昭和三七年三月一日から同年八月三一日までの六カ月間に債権者が組合活動以外の事由で欠勤し、就業規則第三六条第二号所定の休職事由の対象とさるべきであつた日数は、二一日にすぎず、未だ同号所定の三〇日を超えてはいなかつたことになる。しかるに債務者は、債権者に就業規則第三六条第二号所定の事由ありとして、本件休職処分にでたのであるから、これは就業規則の適用を誤つた無効の処分たらざるをえず、従つてまた、本件休職処分が有効なことを前提として就業規則第三七条第一項、第三九条第四号を適用して、債権者を解雇処分に付したことも、無効とさるべきものである。