ID番号 | : | 04384 |
事件名 | : | 仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 津上製作所事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 経営の合理化、企業体質の改善のためになされた帰休期間が満了した際に会社がなした右帰休者全員の整理解雇につき地位保全の仮処分が申請された事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 |
体系項目 | : | 休職 / 休職の終了・満了 解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇の要件 |
裁判年月日 | : | 1966年8月26日 |
裁判所名 | : | 新潟地 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 昭和41年 (ヨ) 106 |
裁判結果 | : | 一部却下,一部認容 |
出典 | : | 労働民例集17巻4号996頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 宮崎鎮雄・月刊労働問題108号106頁/正田彬・法学研究〔慶応大学〕40巻3号94頁 |
判決理由 | : | 〔休職-休職の終了・満了〕 〔解雇-整理解雇-整理解雇の要件〕 本件帰休に関しては別紙一のとおり、帰休者の帰休満了時における取扱いについてはなんら明示の取決めがなされていない。このような場合、債務者の経営能力が許す限り帰休期間満了と同時に帰休状態は解消し、債務者は帰休者に対し所定賃金を支払うなど帰休以前と同一の労働条件で雇傭関係を継続すべき義務があるものと解するのが相当である。蓋し、債務者の立場としては、業績好転が望めない以上、帰休の趣旨に照らして、帰休者を当然復職させるということは考えられないところであるといい得るとしても、一方、帰休者としては、帰休がいかなる理由によるにせよ、解雇、再帰休など帰休後の復職が拒絶されるような事由につきなんら予告されない以上、帰休前と同一の労働条件で復職し、雇傭関係が継続するものと期待するのは、極めて自然なことであるからである。加えて、本件においては、疎明によれば、帰休者に対し、帰休を通告した所属部課長が、帰休後確実に復職できる旨を伝えていることが一応認められ(それなればこそ、疎明によつて一応認められるように、帰休者が帰休期間中に転職することが認められていたにもかかわらず、アルバイト的労務に従事した者を除いては、退職して他へ転職した者が一人もいなかつたのである。)、このような会社側関係者の言動がある以上、債務者に対し、その経営能力の限度において、帰休者に対する復帰義務の履行が信義則上特に強く要求されるものといわなければならない。 ところで、疎明によれば、帰休期間中長岡工場において約三〇名の退職者があつたこと、帰休満了時において、多少なりとも債務者の業績に好転のきざしが見え、残業によるとはいえ受注量を増加しており、また、業績反映に敏感な株価も上昇途上にあつたことが一応認められるのである。更に本件帰休は経営内容の改善をねらいとするもので、経営の行詰りによる事業縮少とか、倒産防止のためやむなくとられた手段ではなく、少くとも、債務者の経営規模をもつてすれば、帰休者との雇傭を続けることにより経営が成り立たなくなるということはもとより、帰休者全員を解雇しなければ、債務者主張の少数精鋭主義、直間比率の是正の達成が(早急な理想的実現は困難であるとしても)全く不可能であるという事情は認められない。このような事実関係と前記のような本件帰休の性格を併せ考えると、帰休満了時に債務者が整理対象者を帰休者に限定し、第一次通告により一挙にその全員に対し解雇という態度でのぞんだことは、経営改善を目指すことのみに急であつて、復帰に対する期待を裏切る等帰休者側の立場を無視した権利の濫用行為といわざるを得ない。この第一次通告は撤回されたが、第二次通告も帰休者のみを対象とするもので、帰休者は昭和四一年五月末日限りで、解雇又は退職という法的形式の差はあれ、当初の期待に反し、債務者との雇傭関係を断絶せざるを得ない立場におかれていたものということができる。すなわち、帰休者は、若干の時期的ずれと法的形式の差を除いては、結果的に第一次解雇が実施されたと同じ状態におかれていたのであるから、第二次通告も第一次通告と同様、権利の濫用行為というべきである。しかして、第二次通告は債務者から帰休者に対する承諾期限を昭和四一年五月末日とする雇傭契約の合意解約申込とその承諾のないことを停止条件とする解雇の意思表示であると解せられるから、結局、右の解約申込及び停止条件付解雇の意思表示はいずれも無効である。 |