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ID番号 04394
事件名 雇傭関係確認請求事件
いわゆる事件名 大映事件
争点
事案概要  いわゆるレッドパージにより解雇された者がその効力を争った事例。
参照法条 労働基準法3条
日本国憲法14条
日本国憲法19条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 均等待遇 / 信条と均等待遇(レッドパージなど)
裁判年月日 1966年11月18日
裁判所名 京都地
裁判形式 判決
事件番号 昭和33年 (ワ) 191 
裁判結果 棄却
出典 時報479号57頁/タイムズ200号131頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労基法の基本原則-均等待遇-信条と均等待遇(レッドパージなど)〕
 最高裁判所昭和三五年四月一八日大法廷決定(民集一四巻六号九〇五頁以下)によれば、右七月一八日付書簡は、公共的報道機関のみならずその他の重要産業の経営者に対し、その企業から共産主義者(共産党員)およびその同調者を排除すべきことを要請した指示である、と解すべきである旨の指示が、当時最高裁判所に対しなされた事実を認めうる。
 最高司令官の解釈指示は、当時においては、わが国の国家機関および国民に対し、最終的権威をもっていたのである(昭和二〇年九月二日降伏文書五項および同月三日連合国最高司令官指令二号四項参照)。
 右解釈指示がなされた事実が、右最高裁判所決定の時期まで何ら公表されず、下級裁判所に対する伝達もなかったことを理由に、あるいは、右解釈指示の法規範性を否定し、あるいは、右解釈指示を最高裁判所のみを拘束する法規範であると解する見解がある。
 しかし、被占領当時、一定の形式によって公布されていないことを理由に、最高司令官の発令した法規範の効力を否定しえなかったものと解すべきであるから、右最高司令官の解釈指示は、最高裁判所になされたことにより、法規範としての効力を発生したものと解するのが相当であり、右解釈指示を最高裁判所のみを拘束する法規範であると解する見解は、法規範の本質上、採用しえない。
 右解釈指示は、発令官憲の特段の措置がないかぎり、法規範不遡及の原則の適用を受ける、とする見解があり、右最高裁判所決定は、右解釈指示のなされた時期を「当時」と説示しているのみである。
 しかし、右解釈指示は、前記書簡の内容を明らかにする解釈指示の形式をもって発令されたものであるから、右の見解は採用しえない。
 右書簡および解釈指示は、ポツダム宣言その他のより上位の法規範に違反するから、無効である、とする見解がある。
 しかし、被占領当時においては、わが国の裁判所は、最高司令官の指示がポツダム宣言その他のより上位の法規範に違反するか否かの審査権を有しなかったものと解するのが相当であり、民事上の法律行為の効力は、一般に、行為当時の法令に照らし判定すべきものであるから、被占領下においてなされた解雇の効力を判定すべき本件において、最高司令官の指示がポツダム宣言その他の上位の法規範に違反するか否かの判断をする必要がない。
 被告の営む映画の製作、配給業は、その事業の性質等から、右解釈指示にいう重要産業に該当するから、原告等が前記解雇基準に該当するかぎり、その解雇は有効である。