全 情 報

ID番号 04399
事件名 賃金請求控訴事件
いわゆる事件名 長野営林局事件
争点
事案概要  営林署の事業主任を作業員との間の造材賃金の単価に関する合意があったとされ、事業主任は造材賃金の決定権限を付与されているとして、右合意にもとづく賃金請求が認容された事例。
参照法条 労働基準法24条
体系項目 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 賃金の決定権者
裁判年月日 1965年1月12日
裁判所名 長野地
裁判形式 判決
事件番号 昭和37年 (レ) 44 
昭和37年 (レ) 45 
裁判結果 認容
出典 訟務月報11巻3号387頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔賃金-賃金請求権の発生-賃金の決定権者〕
 結局前記事業所主任たりし訴外Aと原告等との間に前記出来高払制による造材賃金の単価を一石当り金六八円とする旨の一応の合意が成立するに至つたこと、そこで右訴外Aは右合意成立後の同月中旬頃同年四月七日付の書面をもつて(即ち日付をさかのぼらせて)これが単価を金六八円とする出来高払実施の上申を奈良井営林署長に宛てなし、その後間もなく同営林署長から同日付をもつて(日付をさかのぼらせた)決裁を得て右の賃金単価が認可承認されたこと、右営林署長による認可承認の結果について、右訴外Aからは殊更その旨を原告等作業員に口頭で通知したことはなかつたが、原告等作業員としては右事業所主任の訴外Aとの間に話し合いができれば、出来高払による伐木契約の賃金単価が決定したものであると軽信していたところからして、同訴外人より右営林署長による承認の結果を原告等作業員に連絡しなくても、従来その賃金単価についての事業所主任からの上申が営林署長によつて修正変更された事例はなかつたのであるから、右訴外人から原告等に対し単価に関し何等の連絡もしなかつた場合には、その取扱としてその単価は事業所主任と原告等作業員との間になされた話し合いによる金額どおりに決定されたものと原告等は解していたこと、原告等は昭和三四年五月一二日にその作業を開始した同年四月中旬以降同月末日迄の出来高払による賃金につき、一石当りの単価金六八円の計算によりその支払を受けたことを知るに至つたところから、その受領直後原告X1、同X2両名が前記事業所主任であつた訴外Aに対し白川伐採事業所において右の賃金単価の件につき説明を求めたことはあつたが、単価の相異が契約違反であるとして抗議したようなことがなく、原告等は右賃金の支払をうけたのちも、同年五月中旬頃迄本件一号伐区の伐採作業に従事しており、更にまた同年六月一二日に、同年五月一日以降その作業が完了した同年五月中旬頃迄の出来高払による賃金につき、同じく一石当りの単価金六八円の計算によりその支払を受けながら、その受領後右訴外Aに対してはもとより奈良井営林署長に対しても、抗議を申し入れるようなことは全くしておらず、昭和三五年一一月末頃に開かれた全林野労働組合奈良井分会と奈良井営林署長との間の団体交渉においてはじめて問題としてとりあげられたに過ぎなかつたこと、を認めることができる。そうすると、原告等と奈良井営林署長との間には前記訴外Aを通じ一石当りの造材賃金単価を金六八円とする旨の労働契約が成立したものと解するのが相当である。