全 情 報

ID番号 04401
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 吉谷鉱業所事件
争点
事案概要  閉山による事業の廃止にともなう解雇の場合につき、労働協約上の協議を経ることは必要なく、また解雇制限規定も適用がないとされた事例。
参照法条 労働基準法2章
労働組合法16条
体系項目 解雇(民事) / 解雇手続 / 同意・協議条項
裁判年月日 1965年1月18日
裁判所名 和歌山地
裁判形式 判決
事件番号 昭和38年 (ヨ) 153 
昭和38年 (ヨ) 189 
裁判結果 却下
出典 労働民例集16巻1号1頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇手続-同意・協議条項〕
 そこで、右のような観点に立脚して前記両規定に証人Aの供述(第一回)を合わせ考えると、本件のような閉山(事業の全面的廃止)については、事業の所有者である被申請人が自らの責任と権限とにおいて決定すべき専権事項であり、(もつとも、その濫用が許されないことはいうまでもないが)、従つて、この閉山に関する事項については、同協約上は、前記第五七条第二号の場合に準じて労資協議会における報告事項であると解すべきであり、そして、また、この閉山に伴う全従業員の解雇については、その解雇が従業員の最大の待遇の変更であり、従つて、形式的には同協約第五六条第三号所定の解雇に該当するものと一応は考えられないことはないけれども、同条に規定する解雇とは、主として事業の存続を前提とし、且つ、その解雇について組合の意思を反映せしめるべき場合であること前説示のとおりであつて、本件のような閉山に伴い全従業員を解雇する場合においては、その解雇は閉山の必然的な結果であつて同閉山と密接不可分的な関連を有するのが通例であり、しかも、この間に事業主の恣意の介入する余地は認められないのであり、従つて、このような場合における解雇には閉山の場合と同様組合の意思を反映せしめるのは相当でないと解するのが妥当であるから、本件閉山に伴う全従業員の解雇自体については、右閉山の場合におけると同様同協約上は、前記第五七条第二号の場合に準じて労資協議会における報告事項であると解するのが相当である(もつとも、事業の一部の廃止ないし処分の場合における従業員の一部解雇の場合については別に論ずべき余地はあろうが、この点については暫らく措く。)。そして、このことは、同協約第五七条第一号によれば、生産計画及びこれを実行するために必要な人事も労資協議会における報告事項とされていることに徴してもこれを裏付けることができよう。
 そうだとすると、本件閉山に伴う全従業員の解雇については、労働協約上は被申請人において同協約第一〇条に定められた協議を経る必要はないものといわなければならない(もつとも、本件解雇については、同協約上では右のとおり組合との協議は要しないとはいえ、従業員の待遇に重大な変更をきたすものであるから、互いに誠意をもつて十分話し合いをするのが徳義上望ましいことはもちろんである。)から、この協議を必要とすることを前提とする申請人等の右主張は、その余の点について判断するまでもなく理由がない。