全 情 報

ID番号 04412
事件名 賃金請求事件
いわゆる事件名 神戸製鋼所事件
争点
事案概要  会社入門の際の所持品検査のために就労できなかった間の賃金請求が認容された事例。
参照法条 労働基準法24条
体系項目 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 就労拒否(業務命令拒否)と賃金請求権
裁判年月日 1965年3月27日
裁判所名 灘簡
裁判形式 判決
事件番号 昭和37年 (ハ) 277 
裁判結果 認容
出典 労働民例集16巻2号179頁
審級関係
評釈論文 宮島尚史・労働法学研究会報639号1頁/石川吉右衛門・ジュリスト371号143頁/門田信男・季刊労働法57号93頁
判決理由 〔賃金-賃金請求権の発生-就労拒否(業務命令拒否)と賃金請求権〕
 (七) しからば、本件の原告両名が日刊新聞「アカハタ」各四、五部ずつを所携して入門しようとした際の状況について検討してみるのに、前記二で認定した事実によれば、原告X1の場合でも、原告X2の場合でも、原告等が所携していたのは日刊新聞四、五部に過ぎないのであり、四ツ折にしてはだかのまま小脇にかかえていたというのであるから、原告等としては就業規則第三〇条に言う日常携帯品を所持していた場合に該当し、自由に入門できた場合であり、被告会社の守衛としても、原告等の所持している物がわずか四、五部の新聞であることは外見を見てすぐにわかつたことでもあるので、元来その点検を要求することはできない場合であつたと言える。しかるに被告会社はその守衛等をして原告等に対し、執拗に点検を要求させ、且つピケを張るような方法により入門を阻止させたことにより、原告等が就労することを不可能にさせたものであるから、正に就業規則を濫用したものと言え、その具体的な方法は公序良俗に違反した違法なものであると言うことができる。
 四 結語
 以上に検討したところによれば、原告その余の主張を判断するまでもなく、原告等は雇傭契約上の雇主である被告会社によつて就労することを阻止、拒絶されたもので、原告等の労務給付は債権者である被告会社の責に帰すべき事由により履行不能になつたものと判断されるから、原告等は雇傭契約上の反対給付である賃金を被告会社に請求する権利があると言うべきである。そして原告等が就労不可能とさせられた間に相当する賃金は、原告X1においては七時間分で金一、五五九円、原告X2においては金四五五円八〇銭であることは被告が明らかに争わないので、被告は自白したものとなされるから、被告会社は原告等に対し賃金として右各金銭を支払う義務があるので、右金銭の支払を求める原告等の請求はいずれも正当と言うべきである。