ID番号 | : | 04504 |
事件名 | : | 仮処分異議事件 |
いわゆる事件名 | : | 共立薬科大学事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 期間を二カ年として、薬科大学の助教授として採用された者が、教授の排斥運動を企てるなど学校経営に多大の障害を与えたとして解雇されその効力を争った事例。 |
参照法条 | : | 民法628条 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 解雇事由 / 已ムコトヲ得サル事由(民法628条) |
裁判年月日 | : | 1952年4月14日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和26年 (モ) 8025 |
裁判結果 | : | 仮処分決定認可 |
出典 | : | 労働民例集3巻2号205頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇-解雇事由-已ムコトヲ得サル事由(民法628条)〕 これらの事実によれば、債権者両名がかねてより、A教授に対し、反対の立場を持し、昭和二十六年四月に前記三名が退職した際に、理事及びA教授に反対する活動をなし、更に同年五月十七日の会合において、A教授に対する退職勧告の教授会決議に賛成する署名をなし、他の教職員とともに、理事長らに対し、決議の趣旨を伝えたことについては疏明ありとなすべきも、債権者両名が学閥的偏見にとらわれ、父兄学生を煽動し、団体行動によつて、理事等に反抗し、所謂学校煽動の主因をなしたこと、及び宮本教授に暴行を加え理事長らに暴言を吐き侮辱を与えたことについては未だこれに認めるに足る疏明がないものといわざるをえない。 もつとも成立に真正なることを認めうる甲第八号、第二十三号の三、第二十四号、第三十三号、第三十四号の各疏明並びにB新聞なることについて当事者間に争のない甲第七号によれば、昭和二十六年五月五日のB新聞に学長の後任をめぐつて債務者大学に派閥争があり、そのため前記三名が追い出され、Aがこれら三名に対立する派の雄にして理事と提けいして、右三名の追出しに努力したこと或いはAの言動には以前からとかくの問題のあつたこと等を思わせる記事が掲載され、その際、債権者X1は、右新聞記事の提供者と目され同年五月十二日にC理事長に質問されたが、その直後にX1が債権者X2とともにD学長代理宛に辞表を提出したこと、並びにB新聞の記者Eと債権者X1とは従来より交渉のあつたことを認めうるが、他方また右疏明によれば、債権者X1はB新聞に対する記事提供の嫌疑をうける前から他に転出するため既に辞意を有していたところ、たまたまこのような事件について関連があるかの如く疑われたので、心よからず思い、時期を繰上げて債権者X2とともに、辞表を提出したことも推認されるので、右辞表の提出をもつて直ちに同人が新聞記事提供の責任を負つたものとなすには疏明に乏しいといわざるを得ず、また乙第十五号中には債権者X1が自称父兄会長と称し云々との記載があるが、成立の真正なることを認め得る甲第三十五号、第三十六号と比較対照するときは、到底これを措信することができない。 更に成立に争のない乙第五号、同第十二号、同第十三号に債権者両名が右同年五月十七日にA教授に対して暴行をなし、且つ同日の会合において理事者等に対し「十万円やるから理事長出て行け」「理事総退陣せよ」「貴様らはいつまでこの学校を食いものにする気か」などという暴言をはいた旨の記載があるが、これらの疏明資料を、成立に争のない乙第二号、同第三号と比較対照し更に債権者等の提出する前掲疏明資料と対照して考えてみると右記載はにわかに措信することができない。 然らば債権者両名につき認め得る前記言動をもつて他の教職員と区別してこれを民法第六百二十八条にいう已むことを得ざる解除の事由に該当するものとなすことはできないものといわざるをえない。 |