全 情 報

ID番号 04518
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 名古屋造船事件
争点
事案概要  解雇を撤回する旨の裁判上の和解が成立した後において当該労働者が和解成立前の資料に基づいて整理解雇されその効力停止の仮処分を申請した事例
参照法条 労働基準法89条1項3号
民事訴訟法(平成8年改正前)136条
体系項目 解雇(民事) / 解雇と争訟・付調停
裁判年月日 1953年8月18日
裁判所名 名古屋地
裁判形式 判決
事件番号 昭和27年 (ヨ) 248 
裁判結果 一部認容,却下
出典 労働民例集4巻5号483頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇と争訟〕
 昭和二十五年十一月被申請人会社では業務の運営に支障を来たす者または業務の運営に協力しない者二十名に対し企業防衛の必要から特別整理を行つたのであるが、右申請人三名に対する叙上の解雇もこれに該当するものであることを窺うことができる。そこで進んで前記訴訟上の和解の効力について考えてみるに、成立に争のない疎甲第一号証に証人A(第一、二回)、Bの各証言を併せ考えると、右申請人三名に対する解雇を被申請人会社において撤回する、との和解は、右三名が被申請人会社の従業員たる地位を保有して復職する趣旨でなされたことを窺うことができる。してみれば右和解の成立により、特に和解の対象を右訴訟において問題となつた解雇理由(即ち前記企業防衛のための解雇)に限定するとの意思表示がない限り、凡そ解雇に影響ある過去の事情は当事者双方とも一応これを問題にしない趣旨と解しなければならない。蓋し、一旦解雇を撤回して被解雇者を復職せしめる和解をしておきながら、その雇傭関係を継続し難い新な事情なくして再び和解成立前の事由のみでみだりに解雇することは、その和解の趣旨を全く失わしめるものであり、紛争を繰返すことになり、信義に反するからである。そして右和解においては和解の対象として解雇理由を限定した特約の存在を窺うに足るような何らの措信すべき疎明もないし、また前記証人A(第一、二回)の証言に証人C、Dの各証言を併せ考えると、右申請人三名は昭和二十五年十一月二日の解雇以来被申請人会社において就業しなかつたため、右解雇前に右三名が属していた担当課長が解雇前の成績に基いて作成した考課表を殆んど唯一の資料として本件解雇が行われた事実を窺うことができるが、かゝる和解成立前の事情のみに基いて再び解雇することは右に述べた如く許されないものと解せざるを得ない。