ID番号 | : | 04525 |
事件名 | : | 仮処分異議申立事件 |
いわゆる事件名 | : | 日立製作所事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 人員整理された労働者が組合との協議義務に反し、かつ使用者の主張する事由を整理解雇基準に該当するものとすることはできないとして右解雇の効力を争った事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項3号 労働組合法16条 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 解雇手続 / 同意・協議条項 解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇基準・被解雇者選定の合理性 |
裁判年月日 | : | 1956年4月27日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和27年 (モ) 5997 |
裁判結果 | : | 取消,却下 |
出典 | : | 労働民例集7巻2号246頁/労経速報208号1頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 討論労働法57号33頁 |
判決理由 | : | 〔解雇-解雇手続-同意・協議条項〕 使用者が労働組合とその所属組合員の解雇について協定を締結している場合にはそれが労働協約によらないものであつても、使用者が右協定により解雇権を限定したとき、これに反する解雇の意思表示が無効と解せられる場合があるであろう、しかし単に協議することを約したにとどまる場合には、これに反する解雇は協議義務に違反するということはできても、その故に解雇を無効とする法律上の根拠はないと解するのが相当である。しかしながら(一二)に述べたと同様不当労働行為ないしは権利の乱用となり得る場合があるのでこの点についても検討しよう。 成立に争いない甲第十七号証の参照一、六、前顕甲第十八号証の五、八、十四、十七、二十三、二十四、によれば会社は亀有組合と配置転換、人事異動等について協定書確認書覚書等を交換して協議実施していることが認められるけれども、これらにより会社が申請人ら主張のようにすべての事項について協議の上実施する趣旨のものであると解することは困難であり、前顕甲第十八号証の二も右の趣旨の疏明となし得ないことすでに述べたとおりであり、他に申請人らの主張を認めるに足る疏明はない。 してみれば会社が本件人員整理について亀有組合や総連合と協議する義務は存しないというのほかはないから、本件人員整理について協議したか否かの点の判断をまつまでもなく申請人らの主張は採用しがたい。 〔解雇-整理解雇-整理解雇基準〕 会社は本件人員整理を実施するに当り、総連合と会社との賃上要求に関する第五回団体交渉の席上別紙整理基準を発表し、右基準に依る旨を明らかにしたことは前記のとおりである。してみれば会社は右整理基準に該当するもののみを整理の対象とする趣旨において自ら解雇権の行使を限定したものと解するを相当とするから、解雇には正当の理由を要しないのであるけれども、右の整理基準に該当しないものに対する解雇の意思表示は無効としなければならない。しかして右整理基準は会社が一方的に設定したものであるけれどもその内容は会社の恣意によつて決定せられるべきものでなく客観的合理的に解釈決定せられるべきものと解するのが相当であるところ、人員整理は特別の事情ない限り、会社の経営上の観点から余剰とせられる人員を企業より排除するものであるから、企業の効率的運営に寄与しないと認められるものを整理の対象とする趣旨において、整理基準を解釈しなければならない。しかして人員整理は以上の趣旨において実施せられるものであるから整理基準が従業員の非難すべき行為勤務態度等を該当事由とした場合でも、余剰人員の排除を目的としないで、一般に従業員を企業より放逐する場合と比較して、その非難すべき程度に軽重の差あることは蓋し当然である。換言すれば、通常の経営状態においては解雇理由とすることは首肯し難い程度の軽微のものであつても、これを整理基準該当事由とすることも許されなければならないのである。而して本件において申請人の争うところは専ら整理基準に該当するかどうかの点にあつて、人員整理の必要性とか整理人員の限定又は整理該当者と非該当者との整理基準上の序列設定の当否を争うものでないことは弁論の趣旨に照し明らかである。以上の見地に基いて本件人員整理をみるに、成立に争いない甲第十一号証の一と弁論の全趣旨を総合すれば会社は昭和二十四年春以来の経済状勢の激変と将来予想せられる激しい自由競争に耐えて経営を維持する目的のもとに経営内容を積極的に改善するためにやむを得ざる方策として別紙整理基準により本件人員整理を実施せんとしたものであることが認められるから、右の整理基準も前記の如く経営の効率化のために余剰人員を整理する趣旨においてその内容を合理的に解釈決定しなければならない。 |