全 情 報

ID番号 04545
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 太洋製作所事件
争点
事案概要  使用者の禁止に違反して休憩時間中に花札トバクをしたことを理由に「職務上の指示命令に従わず職場の秩序を乱した」としてなされた懲戒解雇の効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 風紀紊乱
裁判年月日 1960年3月24日
裁判所名 千葉地
裁判形式 判決
事件番号 昭和34年 (ヨ) 120 
裁判結果 認容
出典 労働民例集11巻2号168頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-風紀紊乱〕
 債権者等の所為が就業規則所定の懲戒解雇事由たる(イ)不正不義の行為をなし従業員としての体面を汚したこと、(ロ)職務上の指示命令に従わず職場の秩序を紊し又紊そうとしたこと、(ハ)その他これに準ずる程度の不都合な行為があつたこと、に該当するかどうかについて考えるに、債権者等が昭和三四年七月二一日午後〇時三〇分頃債務者会社板金工場内で花札遊びをしていたこと、債務者会社の従業員間に賭花札が広く行われていたこと、ことに債権者等が賭花札に熱中し、同年六月一二日の業務命令告示後も花札遊びをやめなかつたことは前認定のとおりであるが、このことから直ちに、債権者等が前記日時にも金銭または物品を賭していたものと認めることは困難である。しかしながら仮に債権者等が賭していたとしても、賭したものは煙草ないし小額の金銭たるに止まり、刑法上も一時の娯楽に供する物を賭した場合は賭博罪を構成しないのであつて、これをもつて直ちに不正不義の行為をなし従業員としての体面を汚したとすることは相当でないというべきである。又職務上の指示命令に従わず職場の秩序を紊したことについては、一応これに該当するとはいえるが、その時刻は就業時間(いわゆる拘束時間という意味での)中ではあつても休憩時間中であり、組合の職場会のため他の従業員等の不在中のことであるから、その程度は極めて軽いものといわなければならない。そうするとまだ一度も賭花札に関して処分を受けたことのない債権者等に対し(このことは弁論の全趣旨により明らかである。)、一挙に懲戒処分の極刑である解雇処分をもつてのぞむのは酷に失して相当でなく、よろしく就業規則第五六条但書に従い、譴責、減給又は出勤停止のいずれかによつて処断するをもつて十分であると考えられる。