ID番号 | : | 04547 |
事件名 | : | 仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 日本橋女学館事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 教職員で結成された「B会」での活動をこころよく思っていなかった校長により理由をかまえてなされた解雇が解雇権の濫用にあたるとされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項3号 民法1条3項 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 解雇権の濫用 |
裁判年月日 | : | 1960年3月25日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和33年 (ヨ) 4052 |
裁判結果 | : | 認容 |
出典 | : | 労働民例集11巻2号218頁/時報222号27頁/タイムズ103号85頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 労働判例百選〔ジュリスト252号の2〕42頁 |
判決理由 | : | 〔解雇-解雇権の濫用〕 被申請人の設置する中学校および高等学校の校長Aは、「B会」が労働組合であるという認識はもつていなかつたのであるが、そういう認識とは別に、とにかくC教諭、申請人らが中心となつて、本校の教職員中、校長、教務主任ら幹部をのけものにして「B会」を組織し、時には教職員の勤務条件の改善などの件について要望書をつくり校長のところへ持つてくるなどのことがあつたのをこころよく思つていなかつたし、ことに申請人については、自分の出身校の後輩でもあり、好意をもつて本校に迎えてやつたのにかかわらず、かえつてC教諭らと一しよになつて若い教職員の中心になり、校長にたてつくような態度をみせるので、幾分腹にすえかねていた。たまたま昭和三三年三月五日の卒業式の日に、C、Dその他二名の教諭らが卒業生とビールを飲みかわした事件が発生した(この事実は、前述のとおり当事者間に争いがない。)ところ、校長はC、Dの両教諭には反省のあとがなく、申請人は同人らの行動を校長に対して陳弁弁護したのみならず、申請人については被申請人が本訴で主張するような解雇理由に該当する事由があるとして、C、D両教諭とともに申請人を解雇すべき旨、被申請人の代表者である理事長Eに上申した。理事長はその後数回にわたつて常任理事会を開き、右三名の解雇問題につき協議したが、C、D両教諭の解雇については特に異論もなく、申請人についても校長の上申した解雇理由につき、校長の報告のみにもとずいて検討した結果、そのような事実があるならば、解雇もやむを得ないとの結論に達した。そこで同年三月三一日、理事長は呼び出しに応じて出頭したC教諭、申請人(D教諭も当日呼び出しを受けたが出頭しなかつた。)に対し、「校風に合わないから来る四月三〇日かぎり解雇したいが、将来の就職のこともあるから同月三日までに辞表を出すなら依願退職として取扱う。」旨申し渡した。その際校長から、C教諭に対しては、くわしい理由説明があつたが、申請人に対しては、あまりくわしい理由の説明がなかつた。そうして四月三日までにC、D両教諭からは辞表が出されたが申請人一人これに応じなかつたので、結局同年四月三〇日附で解雇の辞令が申請人に対して発せられるに至つたのである。 以上の事実が認められる。前顕証人Aの証言および申請人本人尋問の結果中この認定に牴触する部分は採用しない。 この認定事実と、前に判示したとおり申請人の解雇理由に関する被申請人の主張が首肯しがたいことを考え合わせると、被申請人が申請人に対してした解雇の意思表示は、校長が自らの意に満たない申請人を理由をかまえて本校から追出そうとする意図に乗ぜられたものとみるのが相当であり、解雇権を濫用するものであつて、無効であるといわなければならない。 |