ID番号 | : | 04552 |
事件名 | : | 仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 松の湯事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 浴場の顧客に対する態度が穏等を欠くとしてなされた浴場従業員(火夫)に対する解雇が不当労働行為にあたるか否かが争われた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項3号 労働組合法7条1号 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 解雇事由 / 勤務成績不良・勤務態度 |
裁判年月日 | : | 1960年4月13日 |
裁判所名 | : | 福岡地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和34年 (ヨ) 260 |
裁判結果 | : | 認容 |
出典 | : | 労働民例集11巻2号368頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 慶谷淑夫・ジュリスト234号83頁 |
判決理由 | : | 〔解雇-解雇事由-勤務成績不良・勤務態度〕 被申請人が、申請人を解雇する理由として主張した事由が、さきにみてきたように一部は単に名目的なものであり、後記の点についても申請人を解雇するに足りるほど重大なものとは解されない以上、被申請人が、申請人の解雇を決意した決定的な動機は、申請人の前述のような正当な組合活動および労働組合の結成運動を理由とするものであると認めるのが相当である。この点に関し、証人A、同Bは、被申請人が、申請人の解雇を決定したのは、申請人については日頃からいやな思いをしており、使いにくい人だつたので、解雇したいと思つていたところへ、前記Cとの口論が起つたので、これをきつかけとしてなされるに至つたものである旨証言しているが、なるほど申請人と被申請人およびその家族との間には、家族同様な親しさが欠けていたことを認めるに難くはないが、弁論の全趣旨によれば、申請人を解雇したいと考えるほど嫌悪していたものとは認められず、またCとの口論の際に被申請人が、申請人に「たつた今やめてくれ」と言つていることもし細に右事件全体を検討してみると、被申請人の長男の仲人であつたCから申請人をやめさせればいいじやないかと言われたことと、その場の極度に緊張したふん囲気と怒りと興奮とに影響されて、突嗟に被申請人の口から発せられた言葉であつて、冷静な状態で真実ただちに申請人を解雇する意思で発せられた言葉であつたとは解されず、このことは、本件解雇が、右事件の日から約一ケ月も経過してなされているにもかかわらず、右一ケ月の期間を経過するまで解雇をすることのできなかつたような理由について、これを納得させるに足る合理的な根拠が、本件においては認められないところよりみても、一層明らかなものというべきであるから結局A、Bの右証言も前記認定を覆えすに足りない。 してみると、被申請人の申請人に対する解雇は、労働組合法第七条第一号に違反し、労働関係の公序に反するものであつて無効なものというべきであり、したがつて、申請人と被申請人との間には現になお雇用契約が存続しているものと認めるべきである。 |