全 情 報

ID番号 04560
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 弘南バス事件
争点
事案概要  争議中になされた勤務時間中の組合活動、所定の場所以外での文書等の掲示を理由とする組合幹部の懲戒解雇の効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 違法争議行為・組合活動
裁判年月日 1960年5月27日
裁判所名 青森地弘前支
裁判形式 判決
事件番号 昭和35年 (ヨ) 38 
裁判結果 申請認容
出典 労働民例集11巻3号583頁
審級関係
評釈論文 慶谷淑夫・ジュリスト241号123頁
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-違法争議行為・組合活動〕
 疎明によれば申請人らは昭和三十五年三月二十一日から三日間に亘り、会社の許可を受けず、その警告制止に反して勤務時間中車掌控室内で組合集会を開き、労働歌の合唱等の組合宣伝活動を指導実施し、更に会社所定の場所以外に組合文書、旗等を貼布掲示したことにより、同月二十五日それぞれ出勤停止処分を受けたこと、その出勤停止期間中は勿論、その後においても前示所為を反復実施し上司である弘前営業所長A、守衛長B等から、しばしば退去警告、制止等を受けているのにかかわらずその際同人らに対し、「おらにも覚悟がある。お前達は何も知らないくせに、俺は死んでもよい。」などと喰つてかかり、更に説諭、制止等も肯かず勤務者の多数現在する車掌控室に於て組合員たる従業員多数を煽動動員して組合集会を強行し、もつて会社が組合に対し組合活動の場として提供した同営業所に隣接する同会社労働会館を使用することなく右控室を組合活動のため占拠して業務の遂行を阻害する行為をしたこと、同年三月三十一日から三日間会社が運行管理上の必要に基いて設けた車掌室の受付窓口三カ所のうち一カ所のみを残してその余を組合文書、赤旗等でふさぎ事務室から右控室に至る通路を赤旗等でおおつて見透しできないようにし、かつ、これを遮断する行為にでたこと(以上の所為中組合集会を開いたこと自体は当事者間に争いがない。)が認められる。
 以上の所為が労働協約第十五条第十六条、就業規則第八条第十二、十三条第五十八、九条等に違反し同規則第二百八条第十三号第十九号及び第二十号第二百九条所定の懲戒事由に該当するものと認められる。然しながら争議中特に組合幹部の地位にある者がこの程度の違反行為を為したと雖も是を以つて直ちに懲戒処分中最も重い懲戒解雇に値するものとは輙く断じ難い、従つて是をしも敢えて懲戒処分をしようと欲するときは寧ろ就業規則第二百九条第二項但書の趣旨を活用し解雇以外の懲戒措置に出ずべきものである。
 右の次第であるから会社の前示措置は結局懲戒権の濫用として本件解雇の意思表示は無効のものというべく、当事者間の冒頭説示の雇用関係はなお存続しているといわざるをえない。