全 情 報

ID番号 04563
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 日本鋼管事件
争点
事案概要  砂川基地測量反対集会に参加した際刑事特別法違反で逮捕起訴された従業員が労働協約および就業規則にいう「不名誉な行為をして会社の体面を著しく汚したとき」にあたるとして懲戒解雇された事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の限界
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 会社中傷・名誉毀損
裁判年月日 1960年7月29日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和33年 (ヨ) 4022 
裁判結果 認容,却下
出典 労働民例集11巻4号783頁/時報233号31頁/タイムズ107号84頁
審級関係
評釈論文 季刊労働法38号57頁/保原喜志夫・ジュリスト237号70頁/労働経済旬報454号18頁/労働判例百選〔ジュリスト252号の2〕50頁/労働法律旬報392号9頁
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒権の限界〕
 使用者の労働者に対する懲戒は、元来企業経営における秩序の維持、および企業の生産性の高揚という目的に即応するための制裁として使用者に許された措置なのである。したがつて労働協約において労働者の懲戒に関する事由が定められている場合、その規定は本来右のような趣旨を有するものと解すべきであり、その適用については懲戒の本質なり目的から来る客観的な限界が存するものと考えられるのであつて、このことは、本件における労働協約第三八条第一一号の解釈適用についても異なるところはない。〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-会社中傷・名誉毀損〕
 申請人らに対する懲戒解雇、ないしは諭旨解雇に適用された労働協約第三八条第一一号に「不名誉な行為をして会社の体面を著しく汚したとき。」というのは、広く社会一般から不名誉な行為と評価されるあらゆる行為を意味するものと解すべきではなく、それが被申請人の従業員に対する懲戒の事由を定めた規定であることに内在する制約を考慮の中に入れてその範囲を画することが要請されるのである。しかも右にいわゆる「会社の体面を汚した」ということも、被申請人の主観によつてのみ判断されるべき事柄ではなく、客観的にそうみられる場合でなければならないのは、もとより当然のことであるばかりでなく、前出(一)、において説示したところにかんがみ、前示(1)、ないし(3)、のような事態の生じた場合、または少くともこれに準ずるような場合に限つて被申請人の体面が汚されたものと認めるべきものである。