ID番号 | : | 04567 |
事件名 | : | 賃金請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 駐留軍基地消防士事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 駐留軍基地において消防士として間接雇用されていた者が、その給与額につき駐留軍から給与基準表のわくを超える部分につき資金の償還がなされない旨通告があったとして、国がその部分につきその後の給与を減額したのに対し、その部分につき請求した事例。 |
参照法条 | : | 民法623条 労働基準法11条 労働基準法89条1項2号 |
体系項目 | : | 就業規則(民事) / 就業規則の一方的不利益変更 / 賃金・賞与 |
裁判年月日 | : | 1960年8月31日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和33年 (ワ) 5511 |
裁判結果 | : | 認容 |
出典 | : | 労働民例集11巻4号906頁/タイムズ108号73頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔就業規則-就業規則の一方的不利益変更-賃金・賞与〕 昭和二六年一〇月一日L・R労務者の給与について一八パーセントのベース・アツプが行なわれたのに対応して原告等に対しても同率の昇給がなされる直前における原告等の給与は、原告等の主張する特認にかかる額のものとして原告等の被告に対する勤務条件の内容をなしていたものと解すべきところ、その後原告等に対する昇給の基準となつた、L・R労務者に対して昭和二六年一〇月一日、昭和二七年一一月一日、昭和二九年一月一日および昭和三二年四月一日に行われた給与のベース・アツプは、成立に争いのない乙第七号証の一ないし四によれば、いずれも国家公務員の給与改訂の一部としてまたはこれに即応してなされたものであることが、認められるのであるが、被告は、前述のとおり昭和二六年一〇月一日L・R労務者の給与に対してベース・アツプを行うにあたり、原告等にもその利益を均霑させるべきであるとの見解のもとに、原告等に対して昇給の措置を講じたところ、米軍の使用する日本人労務者に被告から支払われる給与につき被告に償還の責に任ずる軍側から、原告等のように特認給与を受けている者にかかる措置のとられることは予想しなかつたところであるとして原告等に対する右昇給に対して異議が出されたことが、成立に争いのない乙第八、九号証によつて認められる。そして被告の主張するところによると原告等に関する昇給問題について被告と軍との間で紛争中であつたにもかかわらず、被告はその後においても前述のとおり三回にわたりL・R労務者の給与についてベース・アツプが行われた都度原告等に対して同率の昇給を行つたというのであつて、原告等に対する右各昇給がこれについて軍の同意が得られ、その昇給分についても軍から被告に償還がなされることになることを条件として行われたというような点については、被告より何等の主張も立証もなされていないのである。してみると少くとも原告等と被告との関係に関する限りにおいては、原告等のためにする前記昇給は、その都度原告等の被告に対する勤務条件の内容として、両者の間で確定されたものとみるべきである。 それにもかかわらず被告は、原告等に対する昭和三二年一一月分ないし昭和三三年三月分の給与の支払額を従前のものより減額するにいたつたのであるが、その理由として被告の主張するところは、要するに、原告等に対する前記各昇給が軍の認めるところとならず、日米新労務基本契約の定めるところに従つて被告において当該紛争について日米合同委員会に訴願中であるが、その結果をみるまでの間は米軍契約担当官の決定に服さなければならないところ、昭和三二年一二月五日米軍契約担当官から、被告が原告等に対して事務系給与規程に定められた消防士の基本給基準表の枠を超えて給与を支払うことは新労務基本契約上許されないところであり、その超過部分の給与支払額については米軍より被告に対し資金の償還は行い難いから承知されたい旨の通告がなされたからであるというにある。しかしながら被告が右に主張するところはもつぱら、日米両国政府の間で締結され、この両者に対して拘束力をもつ労務基本契約のもとにおける被告と駐留車との間の内部事情に過ぎないのであつて、被告と原告等との間において一旦定められた原告等の給与その他の勤務条件を被告において一方的に変更し、その効力を原告等に忍受させる当然の根拠とはなし得ないものと考えるべきである。 |