ID番号 | : | 04571 |
事件名 | : | 雇用関係存続確認請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 三菱化成工業事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | いわゆるレッドパージとしてなされた解雇につきその効力が争われた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法3条 労働基準法89条1項3号 |
体系項目 | : | 労基法の基本原則(民事) / 均等待遇 / 信条と均等待遇(レッドパージなど) 退職 / 合意解約 |
裁判年月日 | : | 1960年9月29日 |
裁判所名 | : | 福岡地小倉支 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和31年 (ワ) 377 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労働民例集11巻5号1047頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 保原喜志夫・ジュリスト248号75頁 |
判決理由 | : | 〔労基法の基本原則-均等待遇-信条と均等待遇(レッドパージなど)〕 連合国最高司令官の昭和二十五年五月三日の声明、及び同司令官の、昭和二十五年六月六日付、同月二十六日付、同年七月十八日内閣総理大臣あて各書簡の趣旨は、当時の連合国最高司令官において国際及び国内情勢のもとにおける占領政策を示し、この占領政策を達成するために必要な措置として、日本政府に対し「アカハタ」及びその後継紙並にその同類紙の発行を無期限に停止する措置をとることを命じたるに止らず、さらに公共的報道機関その他の重要産業の経営者に対し、その企業のうちから共産主義者またはその支持者を排斥すべきことをも要請した指示であると解すべきものである。蓋しこのことは右挙示の屡次の声明及び書簡の趣旨に徴して明かであるばかりでなく、そのように解すべきである旨の指示が当時最高裁判所に対してなされていたものであり(最高裁判所昭和二九年(ク)第二二三号、昭和三十五年四月十八日大法廷決定参照)、右のような解釈指示は、当時においてわが国の国家機関及び国民に対し、最終的権威をもつていたのである(昭和二十年九月三日連合国最高司令官指令二号四項参照)からである。而して昭和二十年九月二日降伏文書第五項、同日連合国最高司令官指令一号十二項によると日本の国家機関及び国民が連合国最高司令官の発する一切の命令指示に誠実且つ迅速に服従する義務を有することを要求されていたのであるから日本の法令は右の指示に牴触する限りにおいてその適用を排除されることはいうまでもないところである(最高裁判所昭和二六年(ク)第一一四号、同二十七年四月二日大法廷決定、前掲昭和三十五年四月十八日大法廷決定参照)。 すると被告会社が連合国最高司令官の指示にのつとつてなしたと主張する原告等主張の本件解雇が法律上の効力を有することは明らかであり、右が平和条約発効後の今日においても尚その効力を左右されるものではないことは前示昭和三十五年四月十八日の最高裁判所決定の説示する通りである。よつて原告等主張の理由による原告等に対する被告会社の解雇が、憲法等国内法令に関ることなく有効である以上、右請求原因第二、三項の主張は主張自体理由がない。 〔退職-合意解約〕 一般に雇傭契約にあつては、契約当事者のいずれか一方の解約の意思表示があることによつて同契約は将来に向つて解約されるものであるが、尚当事者間の合意による解約も契約自由の原則よりして何等排斥されるものではない。そこで使用者が従業員に対し何日までに退職願を提出すれば何日付を以て雇傭契約を終了させる旨の期限付合意解約の申入を通知し、従業員が右申入に応じて退職願を提出すると、右は申入に対する承諾として、その申入の通知内容に従つてその期限に雇傭契約は合意により解約されたものとなる。 |