ID番号 | : | 04581 |
事件名 | : | 解雇無効確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 南海バス事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | バス会社の観光開発事業現場監督が会社の人事管理上の問題等につき穏当を欠く言動をしたとして、就業規則の「事業の都合によりやむをえない」に該当するとして解雇された事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項3号 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 解雇事由 / 已ムコトヲ得サル事由(民法628条) |
裁判年月日 | : | 1962年2月3日 |
裁判所名 | : | 和歌山地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和33年 (ワ) 188 |
裁判結果 | : | 一部認容・棄却 |
出典 | : | 労働民例集13巻1号60頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 秋田成就・ジュリスト299号122頁 |
判決理由 | : | 〔解雇-解雇事由-已ムコトヲ得サル事由(民法628条)〕 成立に争いのない甲第一号証によると、同条第一項には第一号に「身体虚弱のため業務に堪えないもの」、同第二号に「事業の都合により已むを得ないもの」とあり、右第二号の概括的な条項の趣旨が必ずしも明確でないが、本来雇傭関係は、債権契約に基いて成立するものであり、使用者は原則として解雇の自由を有するところよりみれば、右条項は解雇事由を制限的に定めたものと解すべきでなく、むしろ企業の経営上解雇が正当であると客観的に判断される理由をひろく含むものと解するのが相当である。従つて事業の縮少、天災事変等企業経営に対する客観的障害事由に限らず、労働者側において、職場の秩序を乱し、企業の円滑な運営を阻害する等の行為があり、その結果解雇されても止むを得ないと客観的に判断される場合も右第二号に含まれるものと解すべきである。 〔解雇-解雇事由-已ムコトヲ得サル事由(民法628条)〕 ところで実質上は一般従業員に近い地位にあるとはいえ、一応経営者の補助者たる地位にある者が、みだりに会社の営業方針や人事管理の方法を不満とし、これに非協力的態度をとることは許さるべきではないが、前記認定の如く何等根拠のないことを理由として不利益な取扱を受けても、なお経営補助者なるの故をもつて泣寝入をしなければならないものでないことは明らかであるから、原告が会社に対し自己に対する不当な処置の是正を求めたことは当然である。 もつとも原告のした前記(1)の言動の中には多少軽卒の譏を免れないものもあり、また(2)のA重役に対する要求もその方法において穏当を欠くものであることは否定できない。然しながら原告をしてかかる言動をなすに至らせた原因が被告側にあることさきに認定した通りであり、加えるに前記の如き原告の実質上の職務内容及び原告の右言動が被告会社の業務の運営上殆んど支障を来さなかつたことなどを考慮すると、原告の右言動のみを一方的に取上げて解雇することは現下の社会通念上正当なものとは認められず、したがつてこれを「事業の都合により已むを得ないとき」に該当するとして解雇することは許されないものというべきである。 四、そうすると、原告と被告会社との間にはトラブルはあつたが、就業規則第三三条第一項第二号の事由に該当するような事実があつたものとは認められないから、本件解雇は就業規則に違反したもので無効のものというべく、したがつて原告は現在もなお被告会社の従業員たる地位を保有し、被告に対し賃金請求権を有するといわねばならない。 |