全 情 報

ID番号 04598
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 日本機械計装事件
争点
事案概要  製造部長が社長の話を聞くために機械職場の者を全員集合させるように命じられたのに、集合するか否かは各人の自由であると答えて業務命令違反で懲戒解雇された組合の執行委員がその効力を争った事例。
参照法条 労働基準法89条1項9号
労働組合法7条1号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務命令拒否・違反
解雇(民事) / 解雇の承認・失効
裁判年月日 1962年7月27日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和34年 (ヨ) 2157 
裁判結果 一部認容,却下
出典 労働民例集13巻4号877頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-業務命令拒否・違反〕
 前記認定のような集合に関するA課長の命令に従わなかつた申請人は、成立に争のない乙第一号証によつて認められる就業規則第一一章第八条第七号にいわゆる「業務に関する会社の命令に従わない者」に一応該当すると言うことができるであろう。しかしながら、前記認定によつて明らかなように、五月二二日には給与に関し団体交渉が行われ、執行委員全員で社長と話し合うことになつていたのであり、執行委員長の前記指令も職場に伝達されていたのであるから、申請人がA課長の命令に応じなかつたのも無理からぬものがあるというべきである。またその後間もなく全従業員が集合して、社長の話はとどこおりなく行われたことも前記認定のとおりである。これらのことに、会社側の組合に対する態度および申請人の組合活動についての前記認定の事実を考え合せると、本件解雇は、申請人の右命令違反の行為をきつかけとし同人の組合活動を嫌悪し、同人を企業から排除するために、なされたものと認めるのが相当である。したがつて、申請人に対する右解雇の意思表示は、労働組合法第七条の不当労働行為であつて、法律上無効なものといわなければならない。
〔解雇-解雇の承認・失効〕
 被申請人は、申請人が昭和三四年七月一三日本件解雇を承認した旨を主張し、申請人が同日被申請人から予告手当名義の金員および離職証明書を受取つたことは当事者間に争いがなく、申請人が被申請人に身分証明書を返還したことは、申請人本人尋問の結果によつて明らかであるが、成立に争のない乙第五号証および申請人本人尋問の結果によれば、申請人が離職証明書の交付を受けたのは、申請人が本件解雇により生活に困窮し、公共職業安定所から失業保険金の給付を受けるのに必要であつたためであり、申請人が身分証明書を返還したのは、被申請人から、身分証明書を返還しなければ、離職証明書を交付しないと言われたためであること、また申請人は解雇予告手当名義の金員を受取つた際、被申請人に対し、本件解雇を承認するものでなく、既に地位保全の仮処分命令を申請中であることを明かにしていることが認められるから、右金員及び証明書の授受によつては、申請人が本件解雇を承認したものと認定することはできない。他に右承認の事実を認定するに足りる疎明はないから、被申請人の右主張は理由がない。