ID番号 | : | 04606 |
事件名 | : | 仮処分取消申立事件 |
いわゆる事件名 | : | 板付基地整理解雇事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 保安上の理由で解雇された基地労働者が人員整理として予備的に解雇されたことにつきその効力を争った事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法20条 労働基準法89条1項3号 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 解雇事由 / 保安解雇 解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇の要件 |
裁判年月日 | : | 1962年11月13日 |
裁判所名 | : | 福岡地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和36年 (モ) 480 |
裁判結果 | : | 却下 |
出典 | : | 労働民例集13巻6号1111頁/訟務月報8巻11号1668頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇-整理解雇-整理解雇の要件〕 これらの各記載を考え合せると、人員整理が予想される場合、米軍及び申立人は人員整理を最少限度にとどめるため、できる限り希望退職の募集及び配転措置等の調整を行うと共に、さらにその予想の有無に拘らず、米軍は人員整理すべき従業員数及び職種を決定する場合(具体的には米軍が申立人に対して人員整理要求をする場合)には、雇用の安定を最大限に確保するため、希望退職の募集及び配転その他適宜の方法をもつて、できる限り事前の調整を行わなければならない義務を定めたものと解するのが相当である。 しかるに本件においては右何れの調整措置もこれを行つたことを認めるに足りる資料がなく、且つこれを行い得なかつたことにつき合理的理由があつたと認めるに足りる資料もない。 〔解雇-解雇事由-保安解雇〕 本件についてこれをみると、被申立人が配転の申出をしたこと、申立人においてこれを拒否したことは当事者間に争いがなく、証人Aの証言から真正に成立したものと認められる疏乙第一、二号証に同証人及び同Bの各証言並びに被申立人本人の尋問の結果を綜合すると、昭和三五年一二月二日米軍から申立人に本件人員整理要求がなされた後、申立人は他の職場職種に約五〇名の欠員のあることを掲示して整理該当者から配転の希望を募集したので、被申立人は他の七名と共に配転の希望を申出た上慎重を期するため特に全駐留軍労働組合福岡地区本部を通じて、配転につき差別的取扱いをしないよう申し入れたが、他の七名の配転希望者はすべて面接の機会を与えられ、うち六名は配転を受けることによつて解雇を免れた(他の一名は適格性がないとの理由で配転を受けられなかつた)にも拘らず、被申立人のみはさきの保安解雇によつて板付空軍基地の籍を喪失していることを理由として、米軍から面接の機会さえ与えられない侭右申出を拒否されたことが認められる。右認定をくつがえすに足りる資料はない。 そうすると、右配転希望をした他の七名については格別、少なくとも被申立人に関する限り、右労働慣行に基く調整措置もとられなかつたものといわざるを得ず、結局において申立人において前記雇用の安定のための調整義務に違反したものとのそしりを免れない。 しかも右調整を行わなかつた理由として、被申立人がさきの保安解雇により板付空軍基地の籍を喪失しているからであるというにおいては、当庁昭和三一年(ヨ)第二〇二号事件の仮処分判決によつて形成された被申立人の労働契約上の地位を全く無視した甚しい差別待遇といわなければならない。 以上の次第であつて、被申立人に関する本件解雇は基本労務契約並びに同細目書に掲げる前記雇用安定のための調整義務に違反し、且つ前記仮処分の趣旨を無視した差別待遇に外ならず、著しく信義に反する。このような解雇は解雇権の濫用としてその効果を否定するのが相当である。 |