ID番号 | : | 04613 |
事件名 | : | 解雇無効確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 国家公務員共済組合連合会事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 「業務外の疾病により一年以上欠勤したとき」を解雇理由とする就業規則における規定につき、結核菌等の検査にあたってきた者の肺結核の発病が業務外と判断されたが、本件欠勤は右疾病によるものではなく、使用者の責に帰すべきものであり、解雇は無効であるが、すでに停年退職をしており雇傭契約存在確認の請求は棄却された事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項3号 |
体系項目 | : | 休職 / 傷病休職 |
裁判年月日 | : | 1963年2月25日 |
裁判所名 | : | 広島地呉支 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和28年 (ワ) 116 |
裁判結果 | : | 一部認容・棄却 |
出典 | : | 労働民例集14巻1号354頁/時報333号37頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔休職-傷病休職〕 被告の就業規則第一〇条第一号に規定する「業務外の疾病」とは、労働基準法に規定する業務上の疾病に当らないものをさすものと解するのを相当とするところ、労働基準法第七五条にいう業務上の疾病は、同法施行規則第三五条に列挙されており、原告の業務と肺浸潤は、同条第一号から第三六号までのいずれにも該当しないから(同条第三七号の労働大臣の指定する疾病はない。)右肺浸潤が同条第三八号の「その他の業務に起因することの明らかな疾病」に当るかどうかが問題となる。原告はA病院、B病院等において、昭和二年以来細菌検査室の主任として結核菌等の検査に従事していたものであるから、右事実によれば、原告の肺浸潤が業務に起因するものではないかとの疑いが濃い。しかし成立に争いない乙第一一号証、証人Cの証言、原告本人尋問の結果を綜合すれば、結核菌はその取扱を慎重にすれば十分に感染を予防し得ること、結核は業務外の生活においても感染の危険があるため業務による感染であるとの認定が一般的に困難であること、特に本件においては原告が右業務に従事してから長年肺結核に罹患しなかつたこと、原告の肺浸潤の発病が業務によるものと推認するに足る特段の事情がないこと等の事実が認められ、これらの事実を綜合すれば、原告の肺浸潤を「その業務に起因することの明らかな疾病」であると認めることは困難である。従つて、原告の疾病は業務外の疾病といわなければならない。 〔中略〕 原告が退院した昭和二六年一〇月二七日当時及び原告が出勤を拒否された昭和二六年一二月一日より原告が解雇された昭和二八年一月三一日までの原告の健康状態が前記(二)(三)認定のとおりとすれば、D院長が原告の出勤を許さなかつたのは、原告の健康状態が未だ出勤に堪え得ないものであることを主たる理由とするものであつたとは到底認め難く、被告の原告に対する出勤許否は正当の事由を欠くものというのほかない。仮りにD院長が、前記の不正確な乙第一号証の診断書を信じてこれを理由として原告の出勤を拒んだものとしても、これをもつてその措置を正当化することはできない。してみれば、原告の右欠勤はその疾病によるものとは認め難く、かえつて被告の責に帰すべき事由にもとずくものと認めざるを得ない。従つて原告は業務外の疾病により欠勤したものとはいえないから、業務外の疾病により一年以上欠勤したことを理由としてなされた原告に対する右解雇は、無効といわねばならない。 〔中略〕 次に原告は昭和三四年六月二七日停年退職したとの被告の抗弁につき判断する。 原告が明治三三年六月二八日生れであること、原告の停年は満五九才であることは当事者間に争いがなく、右事実によれば、原告は昭和三四年六月二七日満五九才となり、停年退職したものと認めるのが相当である。従つて、原告と被告との間の雇傭関係は、昭和三四年六月二七日以降消滅するにいたつたから、原告の雇傭契約存在確認の請求は、結局理由がないことに帰する。 |