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ID番号 04619
事件名 雇傭契約存在確認等訴訟事件
いわゆる事件名 駐留軍労務者事件
争点
事案概要  駐留軍労務者に対する保安解雇につき、不当労働行為にあたるとされた事例。
参照法条 労働組合法7条
民法1条3項
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 保安解雇
裁判年月日 1963年3月30日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 昭和34年 (行) 8 
裁判結果 棄却
出典 タイムズ144号119頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-保安解雇〕
 以上のように、Xが勤務していた現地の軍の当局が、同人の活発な組合活動に着目し、これを嫌悪していた事実が認められ、しかも、後記のように、原告が本件解雇の理由として主張する同人の保安基準該当の事実が明らかでない以上、本件解雇は、Xの組合活動の故に、なされた不当労働行為であると推定せざるを得ない。
 〔中略〕
 軍が、労務基本契約及び附属協定上、原告が提供した特定の労務者に対する解雇について最終的な決定権を有するのは、その労務者に附属協定第一条a項に定める保安基準に該当する事実があり、これを理由として解雇するいわゆる保安解雇の場合についてであつて、保安解雇に名をかりて、真実は他の理由によつて解雇する場合にまで、軍の決定に拘束されるものではない。従つて、本件解雇が、労務基本契約及び附属協定に従つてなされたということから、直ちに、本件解雇は保安解雇であると認定しなければならないものではない。また、軍司令官が、現地の軍当局と全然無関係に、Xに対する本件解雇を決定した特段の事情があつたことについて、なんらの立証もない。
 なお、制度上、軍の保安解雇審査委員会における審査の対象及び資料が保安基準該当事実の有無及びそれに密接且つ直接に関係ある情報に限定されているとしても、果して、現実に、本件解雇について諮問された保安解雇審査委員会における審査の対象及び資料が原告主張のものに限られたかどうかは、本件の証拠上明らかでないのであるから、単に保安解雇審査委員会の制度から、本件解雇について不当労働行為の成立する余地がないものと断定することはできない。