ID番号 | : | 04626 |
事件名 | : | 仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 細川商店事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 使用者は労働者に対して経営権に由来する固有の懲戒権を有するが、懲戒権の行使は経営秩序を維持し、かつその業務執行の正常円滑さを保つために必要な最小限の範囲にとどめるべきであり、寄宿舎内での行為を理由とする解雇が不当労働行為にあたるとされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項9号 労働基準法94条1項 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の根拠 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の限界 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 違法争議行為・組合活動 寄宿舎・社宅(民事) / 寄宿舎・社宅の利用 / 寄宿舎生活の自由・自治・管理権 |
裁判年月日 | : | 1963年5月13日 |
裁判所名 | : | 名古屋地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和38年 (ヨ) 54 |
裁判結果 | : | 一部認容・却下 |
出典 | : | 労働民例集14巻3号719頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 萩沢清彦・ジュリスト317号92頁 |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒権の根拠〕 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒権の限界〕 使用者は労働者に対して経営権に由来するところの固有の懲戒権を有するものであるが懲戒権の行使は企業体の経営秩序を維持し、且つその業務執行をして正常円滑ならしめるに足る必要にして最少限の範囲にとどめるべきものであると解するを相当とするところ特に懲戒解雇は労働者を企業体より排除する効果を生ずるものであつて最も重い懲戒処分であるから使用者が労働者を懲戒解雇するには当該労働者が企業体から排除されてもやむを得ない程の事由のあることが必要である。かような見解を基準として本件懲戒解雇の合理性の有無について以下判断するものである。〔寄宿舎・社宅-寄宿舎の利用-寄宿舎生活の自由・自治・管理権〕 事業所附属の寄宿舎における従業員の生活はその従業員の自治に任かされているところであるから寄宿舎生活の秩序をみだす者に対する制裁も寄宿舎にいる従業員が自治的に行うべきものであり、使用者はそれによつて使用者の企業秩序そのものがみだされない限り寄宿舎生活の秩序紊乱を事由として懲罰を加えることはできないものというべきである。申請人が寄宿舎生活の秩序をみだしたといつてもそれは右の如く軽微であつてそれにより何等被申請人会社の企業秩序をみだしたものということはできないから右事由が懲戒解雇事由に当らないことは明白である。 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-違法争議行為・組合活動〕 被申請人会社は前記のとおり極めて小規模の個人会社ともいうべきものであり、労働組合、就業規則および寄宿舎規則はいずれも存在せず、労使とも家族的雰囲気の下で口約または慣行に従つて労使協調して経営されてきており、またそれをむしろ誇りとしてきたものであることから判断するとかような会社の経営者が労働組合の結成されることを喜ばないことは容易に推認できるところである。右事実に労働組合結成の動きとこれを推進した申請人の役割、これに対して有する会社幹部の認識および感情、解雇言渡し時の状況ならびにその時期等を併せ考えると被申請人会社は申請人等の労働組合結成の動きを敏感に察知していちはやくこれを阻止せんとして、組合結成準備のための従業員座談会の開催予定日の前に、その中心人物とみられる申請人を排除すべく、そのため申請人の多少の非行に名を藉り本件解雇の意思表示をしたものというべきである。 とすれば本件解雇の意思表示は申請人の労働組合結成活動を支配的理由としてなされたものであつて不当労働行為として労働組合法第七条第一号に該当し法律上効力を生ずるに由ないものである。 |