ID番号 | : | 04627 |
事件名 | : | 仮処分控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 東洋レーヨン事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 事業附属寄宿舎自治会が二回にわたってした始末書提出等の制裁処分に従わなかったことを理由とする除名処分が有効とされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法94条 労働基準法95条 |
体系項目 | : | 寄宿舎・社宅(民事) / 寄宿舎・社宅の利用 / 寄宿舎生活の自由・自治・管理権 寄宿舎・社宅(民事) / 寄宿舎・社宅の利用 / 自治と司法審査 |
裁判年月日 | : | 1963年5月16日 |
裁判所名 | : | 名古屋高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和37年 (ネ) 196 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 高裁民集16巻3号195頁/労働民例集14巻3号748頁 |
審級関係 | : | 一審/01610/名古屋地/昭37. 3.27/昭和36年(ヨ)775号 |
評釈論文 | : | 石井照久・ジュリスト325号122頁 |
判決理由 | : | 〔寄宿舎・社宅-寄宿舎の利用-自治と司法審査〕 およそ共同体である社会的団体は、その組織の秩序を維持するために、明文の規則、規約の存否にかかわらず、自律権をもつていることは団体法理上当然のことがらである。かかる自律権の発動である制裁処分の適否が司法審査権の範囲に属するか否かについては考の岐れているところであるが、制裁処分は除名処分も含めて、原則として裁判所は審査権をもつていないと解する。 しかして例外の場合として、制裁処分が被処分者に対し客観的に著しい不利益を与え、国民の権義を保全する司法の立場から黙視できない程度の場合には、その制裁処分は司法審査権の範囲に属するものと考えられる。 ひるがえつて本件除名処分については、控訴人が仮処分の必要性の点として主張しているごとく、控訴人は右除名処分を受けたので寄宿舎規則第十一条但書第二号により退舎させられたことは当事者間に争なき事実であり、控訴人審尋及び本人尋問の結果によれば、控訴人は退舎させられて現在アパートに住む結果となつたため、二交替勤務上の早出或いは晩退による通勤上の苦労、及び寮生活が部屋代の無料であるのに比べアパートの部屋代一ケ月金五千円の経済的負担をしていることが認められ、右事実は控訴人にとつては客観的に著しい不利益と観られるから、本件除名処分は司法審査の対象となるものと云わねばならない。 〔寄宿舎・社宅-寄宿舎の利用-寄宿舎生活の自由・自治・管理権〕 しかして右除名処分の適否について案ずるに、控訴人が第一回の制裁である始末書提出の決定及び第二回の制裁である始末書提出と権利の一時停止の決定に従わなかつたことは当事者間に争がなく、証人Aの証言により成立を認める乙第七、第八号証、同証人の証言及び弁論の全趣旨によれば、控訴人は右制裁に従わないことを公然と言動に表わしていたことが認められ、これらの事実は被控訴人自治会々則第六十四条第一号、第六十三条第一号に照らし除名処分の理由として相当であると云わねばならない。 |