ID番号 | : | 04629 |
事件名 | : | 賃金請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 巴弘広社事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 「懲戒解雇は、行政官庁の認定を得て行なう」旨の就業規則の規定に反してなされた解雇は無効であるが、その後に除外認定をうけたときは、使用者が即時の解雇に固執しない限り、右認定の日から解雇の効力が発生するとされた事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法20条3項 労働基準法89条1項9号 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒手続 |
裁判年月日 | : | 1963年5月27日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和36年 (ワ) 374 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労働民例集14巻3号837頁/タイムズ146号123頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 萩沢清彦・ジュリスト324号102頁 |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒手続〕 被告会社の就業規則第三四条に懲戒解雇は「行政官庁の認定を得て後行う」旨の条項があり、右条項に「行政官庁の認定」とは労働基準監督署長の予告手当除外認定を意味することについては、当事者間に争いがない。しかして右法条の律意は、同法第一一四条、第一一九条等の制裁規定と相いまつて使用者の恣意的な解雇を行政的に監督防止するにあり、右除外認定をもつて即時解雇の有効要件とした趣旨ではないと解するのが相当であるけれども、これと別に就業規則において懲戒解雇の効力を右除外認定の有無にかからせる趣旨の規定を設けることはもとより差し支えなく、かような就業規則の規定は、解雇の自律的制限として使用者を拘束するものというべきである。これを本件についてみると、前示就業規則第三四条は、単に前記法条と同一の趣旨を再言したというにとどまらず、とくに懲戒解雇の事前に除外認定を要する旨を明示したものであつて、それにより懲戒解雇権の恣意的な行使から従業員の地位を保障する趣旨とみられるから、これと異なる慣行等特段の反対事情が認められない限り、除外認定を経ないでした懲戒解雇は無効と解するのが相当である。前認定の懲戒解雇の以前に除外認定を得ていない事実は被告の争わないところであるから、右解雇の意思表示は当時その効力を生じなかつたものといわなければならない。しかしながら、その後被告会社が昭和三四年三月一四日中央労働基準監督署長に対し予告手当除外認定の申請をし、同月二〇日その認定を得ていることは当事者間に争いがないところ、前示就業規則の規定が設けられた趣意に徴すれば、被告会社においてとくに即時の解雇を固執する趣旨でない限り、右認定後更めて懲戒解雇の意思表示をなすまでもなく、右認定を得た時にさきにした懲戒解雇の意思表示はその効力が生じたものと認めるのが相当である。 |