ID番号 | : | 04659 |
事件名 | : | 仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 凸版印刷事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 本社工場凸版印刷課より同工場作業課校正係に配置転換の命令を受けた者がそれを拒否して懲戒解雇されその効力を争った事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 労働基準法89条1項9号 |
体系項目 | : | 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令権の濫用 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務命令拒否・違反 |
裁判年月日 | : | 1957年4月30日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 昭和30年 (ヨ) 4781 |
裁判結果 | : | 却下 |
出典 | : | 労働民例集8巻2号209頁/時報116号24頁/労経速報8巻243号6頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令権の濫用〕 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-業務命令拒否・違反〕 申請人と会社との労働関係は、就業規則第五九条に基き会社側の業務の都合により行われる職場の変更に対して、これを拒否すべき特別の理由のないときはこれに従う義務のあることが定められていること及び前記認定のとおり、協約上も組合が会社の人事異動に介入してその発効を阻止できる制度になつていないことから見ると、組合が会社と交渉中であるとの一事で申請人が本件配置転換を拒否できる特別の理由ありとするに足らずしたがつてその命令に従う義務がなくなるとはとても認められない。そして疎明によれば、(一)申請人は昭和三〇年八月二三日辞令の受領を拒否し、会社側の配置転換の理由や、校正係になることも印刷技術の習得に役立つこと、また長く校正係だけをやらせるわけでもないことなどの説明を受け、更に業務命令に違反しないように注意を受けたのにこれを聞き入れず、申請人の所属課長の説得も拒否したこと、(二)支部組合は同月二四日事業場別経協において会社に対し前記配置転換は申請人の希望に反することであるし、組合としても了承できないから、申請人の配置転換を撤回するよう交渉したが、会社は本件配置転換の理由を説明し、工場運営のあらゆる面を考慮して定めたことであるから、本人が希望しないとか組合に異存があるとかいうことだけでは撤回できない。むしろ本人の説得を求めるという態度であつたこと、次いで会社は同月二五日支部組合に対しこの問題に対する組合の態度が明確でなく、このまま放置することは社内の秩序維持のため困るから翌二六日正午までに申請人を説得するように求めたが、支部組合は配置転換を承認すべきだとする議論と反対論とが対立し、同日夕方まで支部組合の意思を決定できなかつたこと、(三)他方被申請人は作業課長の会見の申込、三、四回にわたる組合執行委員長を通じての本社工場長の会見申込も全部拒否したこと、同月二六日夕方本社工場長は配置転換の辞令と懲戒解雇の辞令とを用意し、申請人が配置転換の辞令を受領するなら、懲戒解雇は取り止める心算で申請人を呼んだが、申請人は頑固にも遂に工場長に会うことを拒否したことが一応認められる。 以上のような状況の下では、申請人の行動は就業規則第五八条第四号にいう「職務上の指示命令に不当に反抗し、職場の秩序をみだそうとしたとき」に該当しその情状重いものと認められてもやむを得ないといわなければならない。 |