ID番号 | : | 04663 |
事件名 | : | 仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 横須賀キャブ事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 米海軍により特に基地内への出入を許可されているタクシー会社の運転手が右基地関係の乗客に対してとった両替についての態度が不当に会社の名誉を毀損したとして懲戒解雇されその効力を争った事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項9号 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 信用失墜 |
裁判年月日 | : | 1957年7月12日 |
裁判所名 | : | 横浜地横須賀支 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和32年 (ヨ) 4 |
裁判結果 | : | 却下 |
出典 | : | 労働民例集8巻4号371頁/労経速報251号2頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-信用失墜〕 当事者間に争のない事実と証人A同B竝びに申請人X本人の各供述とを綜合すれば被申請会社が申請人Xの解雇事由として主張する事実(事実摘示の項二掲記の事実但し同申請人が客の日本婦人に対して馬鹿野郎といつたという主張と同婦人の片手を採つて事務所内え引き入れようとしたという主張については疎明からみて明かでないので之を除くが申請人X本人の供述によると同人は右婦人に対して釣銭のことに関して馬鹿野郎以上に悪質とも思われる「運転手は金庫を背負つているのではない云々」という言葉を用いたことは明かである)の疎明があつたものということができる。 (三) よつて進んで、右疎明された事実が被申請会社所定の就業規則第二十三条第一号にいわゆる「会社の名誉を毀損し又は従業員の体面を傷けたとき」という懲戒事由に該当するかどうかについて按ずるのに、懲戒が従業員に対する重大な処分であることと対比すると右規定の文言の甚だ抽象的一般的なものでありしかもいかようにも解釈適用の許されるような弾力性ある表現形式を採つていることからみれば経営者側である被申請会社の一方的解釈に依つて運用されるのに適さないことであるのは言を俟たないところであり、すべからく経営者である被申請会社と従業員である申請人双方の置かれている具体的な企業の環境と、当該問題となつた従業員の行為の当該企業内に占める位置とそれの行われたときと処における具体的事情竝びにそれによつて示された当該従業員の自己の属する企業に対する信義的でない性行従つて企業のいわゆる生産性に対する態度等を詳細に検討して具体的事実に即して、客観的に妥当な価値判断に従つて解釈適用されるべきものであるといわなければならないのであるが、右に従つて前記疏明された事実をみると弁論の全趣旨からみて当事者間に争いがないと認められる被申請会社がタクシー業を営むものでしかもその主張のようないわゆるベースタクシーとして米海軍基地に出入を許されて営業をなしている会社であること、従つてタクシーの運転者である申請人は車を運転して営業することについて、その企業の特質上いわば企業全体を一個の車に背負つて行動しているものという立場にあるものであること又米海軍基地において営業をすることを特に許されている被申請会社の従業員であること右行為が業務を離れて行われたものでないことと右疏明事実にみられる申請人Xの前記一連の所為とからみると同申請人の所為は全く自己及び自己の属する企業の環境に何等の考慮をも払うことなく客に対する感情をあらわにしてなされた行為でありいずれの点からみても右就業規則所定事由に該当するのを免れ得ないものであるといわなければならない。 |