全 情 報

ID番号 04678
事件名 地位保全仮処分事件
いわゆる事件名 メトロ交通事件
争点
事案概要  労働争議中にその争議の中核的存在たる組合書記長に対してなされた、メーター不倒行為を理由とする解雇の効力が争われた事例。
参照法条 労働基準法89条1項3号
労働組合法7条1号
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 不正行為
裁判年月日 1959年1月24日
裁判所名 東京地
裁判形式 決定
事件番号 昭和31年 (ヨ) 4100 
裁判結果 却下
出典 時報182号28頁/タイムズ87号69頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-不正行為〕
 本件解雇に関しては、争議開始後五ケ月になんなんとする時期に行われ、しかも申請人はその争議の指導的立場にあつた組合の書記長であつたこと、そして前認定のとおりAの解雇の不当なこと、Bの陳述書に現われた神奈川営業所における組合員に対する差別待遇、二の4認定の昭和三一年一一月三日の乗客が会社から依頼されたと認められることなどの事情があり、これらの事情は本件解雇が不当労働行為でないかと疑わしめるものである。
 しかし前記のとおり申請人には前記六回(最初のメーター不倒行為を除くその余)にわたるメーター不倒行為があり、かつ、右メーター不倒行為を申請人が極力否認している態度等からその行為が就業規則に定める解雇事由である業務上不当に自己の利益を図つたときに当るものと推認もべきものである以上、会社が就業規則を適用して解雇することが不合理な措置とも、また必しも苛酷もしくは不公平な措置ともいえないので(甲第七号証の一、二によつて見ても、会社東京営業所においては組合員なるが故にメーター不倒に関する処分について差別待遇があつたと認めるに足りないし、昭和三一年一一月頃までにメーター不倒七回をしたものは申請人以外にないから本件解雇が不公平であると見ることはできない。)、前記Aの解雇や、Bの陳述書にあらわれた神奈川営業所における組合員に対する差別待遇があるからといつて、直ちにこれをもつて本件解雇を律するわけにはいかないし、前記認定の申請人の六回にわたるメーター不倒行為がある以上、申請人の解雇は、右就業規則違反を決定的理由としてなされたと認めるのが相当であつて、結局現疏明の程度では申請人が組合活動家として指導的立場にあつたことが本件解雇の決定的理由となつたものと認むべき疏明があるとはいえないものと考える。
 〔中略〕
 申請人は、本件解雇が解雇権の濫用として無効であると主張するが、申請人には就業規則に定める解雇事由に該当する六回にわたるメーター不倒行為があるので、本件解雇が他に社会的に不相当な目的でなされたと認めるに足りる疏明はない。